「チャットボット」というものをご存じでしょうか。自動応答で会話を行うプログラムのことで、最近ではLINE等のチャットツールで使われていたり、Webサイトを訪問すると会話のためのポップアップが出てきたりと、生活の中でもチャットボットが組み込まれたものを目にする機会が多くなっています。
今回は、そのチャットボットの基本的な知識や、導入する際のポイント、さらにオススメのチャットボットについてご紹介していきます。
チャットボットとは?
チャットボット(chatbot)とは、会話(チャット=chat)をするロボット(ボット=bot)のことです。ここでのロボットとはSF映画で出てくるようなロボットのことではなく、自動で何かをするプログラムのことを指しています。
近年、AIの急激な発展や自然言語処理技術の進歩などにより、チャットボットにAIを組み合わせた、チャットボットが作られ始めました。それにより、チャットボットが入力された質問の意味を自ら理解し、判断したうえで自然な会話をすることが可能になりました。
チャットボットの活用が広まる背景には、有人の問い合わせ窓口が抱える様々な課題があります。例えば、対応するオペレーターの人手不足が深刻化している点や、対応可能な時間が限られるため機会損失が出るおそれがある、などといった課題です。これらを解決するための有効な手段として、チャットボットの導入が急速に進んでいます。
現在、チャットボットはさまざまなWebサービスで活用されています。最近では、電話やメールでのコミュニケーションが敬遠され、LINEなどのチャットでのコミュニケーションが重視されていることから、チャットボットの需要は高まっています。2018年の矢野総合研究所が行った対話型AIシステム市場に関する調査では、2022年には130億円を超える市場規模になると予測されています。
チャットボットの基本機能
まずは、チャットボットの基本的な機能について、主要なものを中心に3つご紹介します。
質問への回答
チャットボットは、あらかじめ想定されるさまざまな質問に対する回答を登録しておくことで、ユーザーの質問に対して最適な回答を自動で行うことができます。
チャットボットは年中無休でいつでも問い合わせに対応できるようになります。有人の窓口は営業時間が限定される事が多いですが、チャットボットであれば時間を問わず営業でき、解決できることが増えるため、顧客満足度の向上に繋がります。
ユーザーが求める情報への誘導
サイト上で目当ての情報や商品などを見つけられずに迷っているユーザーに対して、チャットボットを使うことで対話によってユーザーのニーズを把握し、最適なページへと誘導することができます。
有人対応への連携
チャットボットは既定のシナリオにない個別の状況への対応には向いていないため、チャットボットから有人窓口への切り替えができる機能を持ったツールが多くあります。
簡単なFAQや決まり切った業務を中心にチャットボットに任せ、より細かいサポートが必要な部分はオペレーターに切り替えるといった連携体制を取ることで、簡単な質問はチャットボットのみで解決できますし、難しい質問はスムーズにオペレーター対応へと切り替え、ユーザーに最適なサポートを提供できます。
チャットボットを導入するメリット
チャットボットを導入する主なメリットを4点ご紹介します。
カスタマーサポートの効率化と省コスト化
カスタマーサポートは、電話やメールなどによるユーザーからの問い合わせを人間が個別に対応するものです。
チャットボットが導入されると、よくある問い合わせはチャットボットで対応できるようになります。
そのため、人間が対応する問い合わせの量が大幅に減ることが期待されます。
サポート品質の均質化
サポート窓口は、担当者によって対応の質に差が生じ、属人化が起きやすい部門です。特に新人は分からないことが多いので、電話の場合は確認のために何度もお客さまを待たせてしまうケースもあるでしょう。
一方、チャットボットによる問い合わせ対応であれば、設定したシナリオに沿ったスムーズかつ的確な回答を行えますので、サポート品質が均質化されます。
離脱率やコンバージョン率の改善
サイト上を回遊する中で、求める情報や疑問に対する答えがなかなか見つけられない場合、ユーザーはストレスを感じてサイトから離脱してしまう可能性があります。
そこで、チャットボットを設置することで、顧客は気軽に問い合わせできるようになります。的確な回答ができれば、疑問を払拭できずに離脱してしまう可能性を下げることにもつながります。
また、チャットボットの誘導によって商品の購入など目標とするアクションにつながれば、コンバージョン率の向上も期待できます。
データをもとにしたサービスやWebサイトの改善
チャットボットにはユーザーとの会話履歴が蓄積されるため、ユーザーが求める情報を把握し、サービスの改善に活かすことのできる貴重なデータを集めることができます。
ユーザーからの問い合わせが多い事柄については、サイト上での説明を充実させるなど、サイトの改善に役立てることもできます。
チャットボットのタイプ
チャットボットは、主にAI型とルールベース型、そしてその2つを合わせた複合型に分けられます。それぞれのチャットボットの特徴、メリットとデメリットを挙げていきます。
学習し精度を高める「AI型」
AI型は人工知能型、機械学習型とも呼ばれています。あらかじめ登録された膨大なデータの中から繰り返して学習をすることで、質問の傾向を見つけて、統計的に正解であることが高いと思われる回答を導き出すことができます。
メリットとデメリット
AI型のメリットとしては、会話履歴を学習データとしてフィードバックし続けることで、受け答えの精度を高めることができることや、学習によってさまざまな質問に答えられるようになるため、問い合わせ対応にかかる人的リソースの削減につながり、業務効率とコスト面の両方で有用なことが挙げられます。
また、ユーザーの入力する言葉の意味を柔軟に認識できるため、表記ゆれなどがあっても対処できる点はAI型の強みです。
デメリットは、回答の精度を高めるには多くの学習データが必要になるため、導入前に一定量の質問文と回答文のセットを作成する必要があります。
事前に会話パターンを設計する「ルールベース型」
ルールベース型はシナリオ型とも呼ばれ、想定される質疑応答をあらかじめ登録しておくことで会話を成り立たせるタイプのチャットボットを指しています。
ルールベース型では、アンケートやFAQなど、用途に合わせたシナリオを用意することで、対応の自動化ができます。
資料請求や商品購入などの目的を持ったユーザーのアシストやナビゲーションにも適しています。
メリットとデメリット
ルールベース型のメリットとしては、ユーザーからの問い合わせの内容が想定できている場合は構築が比較的簡単にできること、チャットボットが定型の質問に対応することでオペレーターの必要性が減って人的リソースを削減できることが挙げられます。
デメリットとしては、問い合わせ対応のルールを構築する際に非常に多くの手間と時間がかかる点や、決められたルールに沿った受け答えしかできないため、ルール次第では満足の行く回答ができず、ユーザーの離脱につながってしまう点が挙げられます。
ルールベース型+AI型
ルールベース型とAI型、両方の機能を搭載した複合型チャットボットもあります。
定型の質問に対してはあらかじめ用意されたルールを使って受け答えをし、複雑な会話になった場合にAIが学習したデータを参照して受け答えをするといった対応が可能なチャットボットです。
メリットとデメリット
混合型のメリットとしては、ルールベース型とAI型両方の優れた点を生かすことができること、AI型への引継ぎが前提のため、ルールベース型単体の場合よりも導入前の準備が少なくて済むことが挙げられます。
デメリットとしては、AI型と同様にAIの回答精度を高めるための学習データと時間が必要となること、間違った対応をしている場合にはその都度修正が必要となるなど、こまめなメンテナンスが欠かせない点です。
ちなみに、ルールベース型からAIに引き継ぐよりも、そのまま人間に引き継ぐ方がスムーズなことがあるため、有人チャットツールと連携するとよりスムーズな運用ができます。
チャットボットの選び方
チャットボットはさまざまな会社からサービスが提供されています。そのため、価格帯も、得意な分野も、ツールによって異なります。
チャットボットを選ぶにあたって、現在は全てのパターンで最適となるチャットボットサービスはありません。予算や用途などに応じて幅広く選択肢を取って考えるのが必要となってきます。
無料トライアルが用意されているチャットボットサービスもあるので、トライル期間で目的に合っているか、課題は解決できるかなどを精査してみましょう。
おすすめチャットボットツール
チャットボットツールは何を選べば良いか分からないという方のために、おすすめのチャットボットツールを5つ紹介します。
混合型
まずは、ルールベース+AIの混合型チャットボットをご紹介します。
QuickQA
「QuickQA」は、株式会社エーアイスクエアが運営する混合型チャットボットです。
自然言語処理に長けたAIが搭載されており、少ない学習データでも質問文の言葉の揺らぎをAIエンジンが吸収し、高い精度で回答をすることができます。
QuickQAは機械学習やプログラミングなどの専門知識がなくても扱えるよう設計されており、学習のために必要な作業は管理ツールにて簡単かつ直感的に行えるようになっています。また、導入から定着までのサポート体制も充実しています。
この他にも、総務や人事の領域については5,000種類以上のQ&Aテンプレートが用意されており、導入の際の負担を軽減することができます。
利用料金は初期費用+月額制で、初期費用は110万円、月額は33万円からとなっています。
QuickQAQuickQA
AI型
続いて、AI型のチャットボットのサービスを2つ紹介します。
WisTalk
「WisTalk」はパナソニックソリューションテクノロジー株式会社が運営するチャットボットで、社内ヘルプデスク業務向けとなっています。経理・人事・法務部門それぞれに特化したQ&Aテンプレートが用意されているのが特徴です。
BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)という、Googleが公開している機械学習を用いた最先端の自然言語処理技術を用いて、自動でのタグ付与や質問者の感情分析を行うことができます。
1か月間の無料お試し版があり、その際はサンプルデータでも試すことができます。価格は要問合せとなっています。
AI Messenger
「AI Messenger」は、サイバーエージェントグループの株式会社AI Shiftが運営するチャットボットです。必要な機能の選定や初期設計も含めて任せることができるため、導入時は完成したチャットボットの確認とサイトへの埋め込み作業を行うだけでよいという手軽さが特徴です。
また、導入後の分析や利用状況の分析、改善提案など継続したサポートが受けられます。LINEでも使用ができるうえ、チャットボットの回答に画像や動画の添付も可能です。
こちらも価格は要問合せとなっています。
ルールベース型
最後に、ルールベース型のチャットボットのサービスを2種類紹介します。
チャットディーラー
「チャットディーラー」は、株式会社ラクスが運営するチャットボットです。チャットボットの細かいカスタマイズが可能で、デバイスによって表示方法の変更もできます。
設定したシナリオに不備があった場合、自動で検知して警告マークを出す機能があり、原因の確認ができるので修正もしやすいです。また、チャットボットだけでは対応できなかった時に表示する問い合わせフォームの作成ができ、作成したフォームごとに通知先メールアドレスを変更できます。
さらに、訪問中のページURLやページ訪問からの経過時間、そのWebサイトへの訪問回数など、さまざまな条件を設定したうえでメッセージの送信やフォームの表示、バナーの表示などができます。
また、チャットボットの選択肢の選択率や離脱率を集計でき、チャットボットの対応に対する評価のアンケートを表示できるので、PDCAサイクルを回して改善が図りやすいです。
チャットディーラーの機能が無制限に利用できる14日間の無料トライアルがあります。料金は初期費用+月額制で、1つの契約で5つのドメインまで利用ができます。
sinclo
「sinclo」は、メディアリンク株式会社が運営しているチャットボットです。マニュアルを見なくても直感的に操作ができる管理画面で、使いやすく設計されています。サイトに設置するチャットウィンドウのデザイン、配置、表示タイミングなどを自由に設定できます。
サイト訪問者の状況に合わせて最適な話しかけをする、オートメッセージ機能で離脱率を下げることができます。また、サイト訪問者がどの広告から流入してきたのかをリアルタイムに把握することができ、データは履歴として蓄積されるので集客活動の効果測定としても活用ができます。
さらに、サイト訪問者が閲覧しているページを共有して双方向で操作をするブラウザ同期と、サイトに掲載されていない資料をサイト訪問者に共有して双方向に操作をするドキュメント共有ができます。
sincloの機能が無制限に利用できる14日間の無料トライアルがあります。料金は月額10,384円(税込)からとなっています。
まとめ
この記事では、チャットボットとは何か、その機能や種類、メリットとデメリット、おすすめのチャットボットサービスについてご紹介しました。
チャットボットツールは現在、さまざまな会社がサービスを提供しています。
この記事を参考に、目的や予算に合わせて、自社に合ったチャットボットツールを選択してみてください。