なぜSaaSビジネスは世界規模で急成長することができるのか?

  • 2019.08.30
  • 更新日:2019.09.17
  • SaaSジャーナル
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なぜSaaSビジネスは世界規模で急成長することができるのか?

なぜSaaSビジネスは世界規模で急成長することができるのか?

なぜSaaSビジネスは世界規模で急成長することができるのか?

最近よく耳にするSaaS。この言葉が使われはじめたのは2006年頃だと言われています。

その後日本へも普及していき、国内でSaaSが徐々に盛り上がりを見せているのもここ数年の話です。

SaaSビジネスは世界でもまだ10数年という歴史しかありませんが、いま世界規模でハイスピードに成長を続けています。

そして日本では2018年がSaaS元年とも言われ、日本での成長も大いに期待されています。

では、なぜSaaSはここまで急成長しているのでしょうか?

今回はその成長の背景について、SaaSの特徴を踏まえてくわしくまとめました。

 

SaaSとは?

まずはSaaSについて簡単に説明しましょう。

SaaSとは、Software as a Serviceの略で、「サース」もしくは「サーズ」と呼ばれます。

このSaaSという言葉は、ソフトウェアの提供形態のことを指す言葉です。

 

従来、ソフトウェアはパッケージとして提供される形が主流であり、パッケージを購入し端末にインストールすることでシステムが利用できるような仕組みになっていました。

しかしSaaSの場合は、パッケージの購入は必要ありません端末にシステムをインストールすることも必ずしも必要ではなくなりました。

SaaSの特徴は、ソフトウェアの機能をクラウド上で利用できることにあります。

そのため、インターネットが使える環境であれば、どんな場所でもどんなデバイスからも同様のソフトウェアが利用できるようになり、同じアカウントでログインすればどこにいても同じデータを共有することができるのです。

 

SaaSの成長は、企業の働き方にも影響を及ぼしました。

今までは会社の端末でしか作業ができなかったものが社外でも利用可能となったことで、リモートワークなど働き方の多様性に対応できるようになりました。

営業など社外で働くことが多い従業員も、データ処理のためだけに会社へ戻る必要がなくなるなど、様々な場面で業務の効率化が図れるようになったのです。

 

SaaS市場は世界的に急成長している

SaaSビジネスは急成長を遂げているとお話しましたが、世界的に見てどのくらいの規模で成長しているのでしょうか?

令和元年に発表された総務省のデータによると、SaaSを含むクラウドサービスは2018年時点で約2,000億ドル規模となっています。

2014年からの4年で約3倍も成長していることがわかります。

また今後もさらに成長を続けることが予測され、2021年には2018年から比較すると約1.8倍、3,469億ドルの市場規模になると予測されています

 

クラウドサービス全体の中でも、SaaSは約1/3の割合を占めています。

ちなみにこのグラフにあるその他のPaaSやIaaSなどについて簡単にご紹介しますと、

Paas(Platform as a Service)…ソフトウェアを開発・稼働させるためのプラットフォーム自体をクラウド経由で提供するもの。サーバーやデータベースなども揃っているため、それらを利用者が用意する必要がない。

IaaS(Infrastructure as a Service)…クラウド経由で、ハードディスクや仮想サーバ、ネットワークなどといったインフラを利用できる。利用者自身でOS等を準備し環境を整えるのでPaaSに比べると自由度が高いが、環境構築のスキルや知識が必要となる。

CaaS(Container as a Service)…クラウドの上で他のクラウドのサービスを提供するハイブリッド型のサービス。

 

また、世界の地域別で見るとクラウドサービスの市場規模が最も高いのは北米、次いで欧州、アジア太平洋、中南米となっています。

このように、SaaSはこれからも成長を続け、世界的にも市場規模を伸ばしていくことが見えています。

ではなぜここまで成長できたのか、利用する顧客と、サービスを提供する側それぞれの目線で理由を探ってみましょう。

 

引用:総務省/令和元年版情報通信白書(第1章第2節デジタル経済を支える ICT の動向)

http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/pdf/n1200000.pdf

 

なぜSaaSは急速に成長し利用者を拡大できるのか?

SaaSが急成長する以前は、オンプレミスと言われる「自社の環境内にインストールして使うタイプのソフトウェア」が主流でした。

一方SaaSはオンプレミスとは異なり、クラウド上にて提供され、インターネット環境さえあれば、どこでもどんなデバイスでも利用が可能です。

この「クラウド上で提供される」という点が様々なメリットをもたらし、利用者が拡大、市場が急成長していきました。

 

では、具体的にどのようなメリットがもたらされたのでしょうか。

まずは利用する顧客の目線に立って、SaaS成長の理由を考えていきましょう。

 

初期の導入コストが抑えられる

SaaSが急激に成長した理由のひとつとして、導入コストが大幅に抑えられるという点が挙げられます。

 

コスト削減について、具体的にご説明しましょう。

既存のパッケージ型ソフトウェア導入の際には、最初に多額の導入費用を支払うパターンが主流でした。

システムの媒体を購入し所有するという思想のため、どうしても高額になってしまうのです。

しかし、SaaSの場合には基本的にサブスクリプション型(利用期間に応じて料金を支払う方法)となるため、初期に多額の費用を支払うことはなく、毎月一定のライセンス料金を支払うというスタイルに変わります。

一度に大きな出費が起きることを避けつつ、毎月一定額の出費のみでサービスを利用できるため、導入への金銭的ハードルが下がりました。

また、自社内の環境へのインストールも不要なので、時間的なコストもほとんどかかりません。

 

また、このサブスクリプション型の普及は、SaaS市場の急成長に拍車をかけました。

現在ではBtoBに限らずBtoCの領域でも、サブスクリプション型は多く採用されています。音楽配信やTV、漫画や雑誌、最近では洋服などにもサブスクリプション型が存在します。

ベンダーは「顧客が欲しいのは媒体ではなくそこから配信される情報であり、そのもの自体を所有するということは顧客にとっては必ずしも必要ではない」という顧客の真のニーズに気が付き、その結果生まれたサブスクリプション型は顧客を魅了しました。

その結果売り切りモデルからサブスクリプション型への転換が加速することになり、同時にSaaSの成長も促進されることになったのです。

 

この他に、SaaSでは無料体験・デモが行いやすいという点も、導入へのハードルを下げるひとつの要因となりました。

パッケージ型のソフトウェアと違い、多くのSaaSはアカウントを発行するだけでサービスの利用が可能です。そのため、多くのSaaSサービスが無料体験を提供しています。

まずは使ってみて、使い勝手が良ければ費用を払って継続利用ができるというスタイルは、購入費用を無駄にすることがなく、企業の規模に関わらず顧客にとって大きなメリットとなっているようです。

 

カスタマーサクセス重視のビジネス=常に改善される

SaaSビジネスでは、カスタマーサクセスが重要視されています。

カスタマーサクセスとは、顧客の成功をベンダー側のゴールと設定し、システム導入後も顧客にとってベストな方法や機能を常に模索し、改善し続けるということを指しています。

SaaSがカスタマーサクセスを重視する理由は、顧客に解約されないことを常に意識しなければならないという点にあります

 

買い切り型と違い、SaaSは必要性を失えば簡単に解約されてしまうリスクを常に抱えています。

同様のサービスを提供する競合は山ほどあるため、常に機能改善やサポート改善を続けなければ顧客は離れ、ビジネスは成立しなくなり企業も成長できません。

そのため、SaaSでは日頃からアップデートを重ね、顧客の要望を反映するだけではなく、顧客のビジネスがより良くなるようにSaaSの機能自体を成長させ、顧客の一歩先を走り続けていることを目指しています。

SaaSを利用する顧客の視点で考えると、毎月変わらない費用の中で常に最良の状態へと改善し続けてくれるという点は、利用者にとってSaaSを利用する大きなメリットといえます。

 

必要な時に、必要な機能を、納得の値段で

SaaSはクラウド上にあるソフトウェアを利用するとご説明しましたが、どの機能を使うか選択ができるのもSaaSのメリットです。

今までの買い切り型のソフトウェアでは、企業がパッケージングした機能をそのまま購入するしかできず、不必要な機能まで付いて高額になるケースが多くありました。

しかし、SaaSでは必要なタイミングで必要な機能だけを選んで導入することができるため、導入にかかる初期費用は必要最小限に留められます。

 

Webサイト上で詳しく機能が紹介されていることも多いため、他社製品との機能や価格を簡単に比較でき、無料トライアルも充実しているため、コストパフォーマンスにも納得したうえで購入することができるのです。

企業にとって不必要な機能に予算をかけるのは無駄以外の何物でもありません。

余計なものを省き、必要なものをシンプルに取り入れられる使い勝手の良さもSaaSの良さであり、成長理由のひとつとなっています。

 

SaaSはベンダー側もメリットが多い

ここまでは顧客にとってのメリットをご紹介しました。続いては、サービスを提供する側にもたらされるメリットについてご紹介します。

従来のオンプレミス型のソフトウェアと比べると、様々な点で違いがあります。

 

保守コストの低減

保守コストとは、システムの機能を維持するためにかかる費用のことを言います。

システムを企業のサーバーにインストールして運用するオンプレミスよりも、SaaSは保守コストを抑えられるという特徴があります。

オンプレミスの場合、それぞれの企業環境でインストールされたシステムについて不具合が発生した場合には、ベンダー側が人を派遣して改修作業を行います。利用する企業の環境によって作業時間に差がでることもあれば、改修作業員という人件費もかかり、どうしても保守コストが膨らむ傾向にあります。

しかし、SaaSではシステム自体が常にベンダー側の環境下にあるため、派遣用の作業員を別途確保する必要はありませんまた、システムの大元は常にベンダー側にあるため、改修作業も最小限に抑えられ保守コストが大幅に低減されるのです。

保守コストは顧客が利用する限りかかり続けるものなので、この削減はベンダーにとっても大きな利益のひとつとなります。

 

収益の安定化

今までの買い切りモデルの場合、初期購入時以外でベンダーが利益を生むのは難しいのが現状でした。

しかしSaaSではサブスクリプション型を取っているため、顧客が解約しない限り毎月安定した収益を見込むことができます。

1回の単価は安いものの、その収益が継続的に続くという見通しがあることで、企業のキャッシュフローが予測しやすくなるのです。

SaaS市場の成長はめまぐるしく、今後もさらに市場は成長することが予想されているため、投資家からの資金投入も増えています。

そういった資金調達の観点でも、将来の成長見込みが明確になっていることは、投資のしやすさに繋がります。

SaaS企業に対して積極的な投資が行われることは、結果としてSaaS市場の成長を後押しすることになります。

 

導入コストが低いので、ユーザーを獲得しやすい

導入コストの低さは顧客のとってのメリットだと紹介しましたが、ベンダー側にも大きなメリットとなります。

例えば買い切りで提供されていた機能が初回導入100万円のものだった場合、導入できる企業はある程度潤沢に予算を確保できるような企業に限られます。

一括で100万円は魅力的ではありますが、同時にユーザーを限定してしまうといったデメリットも生まれます。

 

SaaSでは導入コストは数千円~数万円のため、大企業に限らず中小企業や個人でも導入が可能です。

そのため利用者の幅が大きく広がることで、今までよりもユーザー獲得の難易度を下げることができるのです。

今までは導入したくても価格面であきらめていたユーザーが利用できるということは、SaaS市場のさらなる成長につながっていくと言えるでしょう。

 

契約継続に向けて常に改善が必要

ユーザーを獲得しやすい、というメリットを挙げましたが、それは反面他社への乗り換えが容易」というデメリットにも繋がります

サブスクリプション型の商品は長く継続して利用してもらうことで利益を創出するため、短期間で離脱されてしまうと旨みがありません。

そのため、SaaSを提供するベンダーは、顧客の課題を把握し、サービスの改善を常に行うことで、契約を継続してもらう必要があります。

 

常に改善を続けることは、提供側にとっては大きな負担にはなります。

システムの使い勝手や機能はもちろん、不具合が起きた際の問い合わせのしやすさや回答スピードといったカスタマーサポートの側面も充実させる必要があります。

そのため様々な側面から、顧客満足度の最大化を目指していく必要があります。

しかし、だからこそユーザーのフィードバックをしっかりと集め、サービスの改善や機能追加が進みます。そうやってできることが増えれば、また新しい顧客にもアプローチできることに繋がります。

常に競合との競争状態にあるということは、負担が大きい反面、SaaSの成長を後押しする重要な要因の一つとなっています

 

もちろん競合他社も同様に努力を続けているため、常にスピード感を持ってサービスの改善を進めなければなりません。

このように、SaaS業界は常に競合にさらされており、努力を怠ればたちまち顧客は離れていってしまうため、継続して成長し続けなければなりません。

このプレッシャーも、SaaSを成長させている要因のひとつとなっています。

 

まとめ

SaaSが成長を続けている背景と、その理由についてまとめていきました。

データを見てもわかるように、世界でも注目されるSaaSはこれからも成長し市場規模を伸ばしていくことが予測されています。

現在は、大企業で定年まで働く人は少なくなってきました。

未来を見据えた若い人たちが、ベンチャーやスタートアップなど個々で独立し新しい価値を日々生み出し続けています。

SaaSを始めとするクラウドサービスは、このような世界の動きを敏感に察知し、世界が生み出す新しい価値に伴走するよう、ともに成長を続けています。

SaaSの成長は「多様な働き方に対応できる」という時代のニーズにマッチした結果なのかもしれません。

社会の変化をとらえ社会の成長をサポートできるSaaSを、ぜひ上手に活用してみてください。

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