【やさしく解説】iPaaSとは?なぜ注目されているのか?

  • 2019.09.03
  • 更新日:2021.03.28
  • SaaSジャーナル
  • 当サイトで紹介している一部のサービスは、アフィリエイトプログラムを利用して情報を掲載しています。

【やさしく解説】iPaaSとは?なぜ注目されているのか?

【やさしく解説】iPaaSとは?なぜ注目されているのか?

【やさしく解説】iPaaSとは?なぜ注目されているのか?

いま、世界は多くのクラウドサービスで溢れています。日本でもクラウドサービスを利用する企業が年々増えてきました。

総務省によるデータを見ると、2018年時点では約6割の企業が何かしらの形でクラウドサービスを利用していると答えており、この割合は4年前と比べると20ポイントも増加しています。

参考:総務省/令和元年版 情報通信白書 第2部 第2節 ICT サービスの利用動向
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/pdf/n3200000.pdf

このようにクラウドサービスの利用が一般的になった現在、注目を集めているのがiPaaSです。

iPaaSとはどういったものか、SaaS躍進の背景も踏まえつつ詳しく見ていきましょう。

SaaSへの乗り換えの波は止まらない

上のデータを見てもわかるように、クラウドサービスはハイスピードで企業に浸透していっています。

中でもソフトフェアをクラウド上で利用するSaaSは飛躍的に利用シェアを伸ばしており、今まで自社内でシステムを稼働させていたオンプレミスからSaaSへ移行するケースが後を絶ちません。

では、なぜこれほどまでにSaaSへの乗り換えが進んでいるのでしょうか?

SaaSには以下のようなメリットがあります。

・導入コストが低い
・クラウドシステムのため利用端末を選ばない
・常に最新へアップデートされ続ける
・必要な機能を選択して導入できる

SaaSはソフトウェアをサブスクリプション型で提供しているため、オンプレミスのようなシステム開発費や高額な初期導入費用がかかりません

使いたい機能を使いたい期間の分だけ料金を支払って利用できるため、予算の少ない企業にも導入しやすくなっています。

また、クラウドサービスであればネット環境さえ整えば、場所や端末を選ばず同等の作業ができるため、働き方の多様化や業務効率化といった観点からも、メリットのあるサービスだと捉えられています。

このように、企業の導入ハードルを下げ、フレキシブルに利用できるSaaSは多くの企業に支持されるようになったのです。

iPaaSとは

SaaSへの乗り換えが加速している背景をお伝えしましたが、このように今、日本の市場は大きな転換期を迎えています。

この変化があったからこそ、iPaaS市場が注目されはじめています。

では、なぜiPaaSが市場に求められるようになったのでしょう。

iPaaSとはどんなものなのか、iPaaSの役割、iPaaSの導入理由や導入方法について、以下よりご説明していきます。

iPaaSの役割は「システム間のデータの橋渡し」

まずはiPaaSとはどういったものなのか、という点についてご説明します。

iPaaSとは「Integration Platform as a Service」の略で、異なるアプリケーション同士をつなげ、データを統合したりシステムを連携させたりすることができるクラウドサービスです。

読み方は「アイパース」です。

iPaaSで可能となるのは、オンプレミスのシステムとSaaSのシステムの連携、さらに、SaaSのシステムと別のSaaSのシステムなどクラウド同士でのシステム連携です。

システム同士の連携がなぜ重要なのか、次で詳しくご説明しましょう。

なぜiPaaSが必要なのか

iPaaSが必要とされる主要なシーンを2つ例に挙げてご説明します。

①過去データの有効活用のため

クラウドサービスが拡がる以前は、企業の多くはもともとオンプレミスでシステムを利用していました。多くのシステムは単体で完結しており、その中に登録されているデータはそのシステム上でしか活用できないのが当たり前でした。

そんな時に訪れたのが前述のような「SaaS乗り換えの波」です。より利便性が高いSaaSサービスへの乗り換えを多くの企業が検討し始めました。

しかし、このときネックとなるのは、オンプレミスのシステム上に蓄積された、膨大なデータです

データは企業の財産であり、簡単に捨てるわけにはいきません。かといって、手動でデータを移行するのはあまりにも非効率ですし、自動的にデータを移行するプログラムを追加で開発するのにも、莫大な費用が掛かってしまいます。

そこで活躍するのがiPaaSですiPaaSを利用すれば、オンプレミスのシステムとSaaSの間でデータの橋渡しが可能になります。

大幅に作業効率を上げることができることに加え、既存のデータを無駄にすることなくクラウドサービス上で新たに活用することができるようになります。

②SaaS同士でのデータの有効活用・連携のため

もうひとつの場面は、複数のSaaSサービスを利用している場合です。様々なシステムに散らばったデータを統合し、ワークフローを最適化する際にもiPaaSが活躍します。

iPaaSを導入することで、各SaaSサービスのデータが容易に連携できるようになります。しかも自動的に同期される環境も作れるため、各SaaSで別々にデータを登録する必要がなくなるなど、非常に効率的にデータを利用できるようになります。

データ統合・同期が可能になると、別々のサービスであっても柔軟な連携が可能になります。

さらに、月額数万円という低価格でこのパフォーマンスが得られるという点も大きなメリットとなっています。

RPA・iPaaSの大きな違い

iPaaSは定型の業務を自動化できるということから、しばしばRPAと混同されることが発生します。

RPAとは、Robotic Process Automationの略称でPC上の決められた処理を人の代わりにロボット(プログラム)が自動でおこなう業務効率化ツールです。

iPaaSと似ているように感じられますが、どんな違いがあるのでしょうか。

RPAは特定のアプリケーション上で動くため、小さなタスク単位の自動化に留まります。

一方、iPaaSは複数のアプリケーションを連携してワークフロー単位で自動化します。

つまり業務範囲に違いがあります。

前述の通り、iPaaSはシステムやデータの統合も担っており、より幅広い役割を果たしているといえるでしょう。

 

もうひとつ大きく異なるポイントは、RPAはアプリケーションの画面操作を自動化し、iPaaSはアプリケーション間をAPIで繋ぎクラウド上で連携することにより自動化することです。

したがってRPAはUIの変更に対応できず、アップデートの多いSaaSではRPAを使用すると止まってしまう可能性が高いといえますが、iPaaSではUIの変更に影響を受けません。

反対に、iPaaSはAPIがなかったり公開されていないソフトウェアに対しては使えないことがデメリットですが、RPAの場合はAPIがなくても動きます。

このように得意分野や役割が異なるため、RPAとiPaaSのどちらがいいかという答えはなく、適材適所で使い分けることが重要になります

 

iPaaSシステムの例

ではここからは、具体的なiPaaSシステムを紹介していきましょう。

iPaaSはもともとアメリカで普及し始めたサービスのため、現在の主要なiPaaSシステムはアメリカで開発されたものがほとんどです。

日本で利用されているものの多くは、アメリカ企業のシステムを日本の企業が販売しているというスタイルとなっています。

アメリカでいち早く浸透、日本でも徐々に拡がる

では、世界におけるiPaaS市場はどのくらいの規模なのでしょうか?

アメリカのカリフォルニア州に本社を構えるインフォマティカは、2018年の世界iPaaS市場における収益の18.3%を獲得したと発表しています。

この時の世界のiPaaS市場規模は16億9,000万ドル、日本円でおよそ1,800億円(1ドル=106円の場合)です。

かなりの市場規模があることが数字からもわかりますね。

このインフォマティカは6年連続でiPaaS市場のリーダーとして認定されており、iPaaS市場を牽引している存在となっています。

これに比べると、日本での普及は、まだまだ発展途上の状態と言えるでしょう。

現に日本で開発されたiPaaSは少なく、ゆえに日本産のSaaSとの連携が弱いという課題もあります。

日本でのiPaaS市場は徐々に広がりを見せていますので、今後の成長に注目です。

ではここからは、具体的なiPaaSシステムをご紹介していきます。

Workato(ワーカート)

Workatoとは、アメリカ・カリフォルニア州のWorkato社が開発するiPaaSです。

2013年に設立した同社は、その後成長を続け、2018年5月に日本でもビジネス展開を始めました。

Workatoでは、プログラミングを行うことなくブラウザ上でアプリケーション同士を接続、活用方法や接続の仕方を22万以上ある「レシピ」と言われるロジックの中から選択するだけで、機能が統合されるという仕組みになっています。

iPaaSを選ぶ際の重要なポイントとして、目的のアプリケーションにiPaaSが対応しているかどうかという点があります。

Workatoは、Salesforce,やGoogle、WorkdayやDropbox、Slackなど、日本でも多くの企業が利用しているクラウドサービスを始め、350以上のアプリケーションに対応しています。
また、国産のSaaSツールについても、徐々に対応できるツールが増えています。

Workatoは見やすいインターフェースも特徴で操作も簡単、Excelの関数を扱えるレベルのスキルがあればOKという手軽さもポイントです。

国内で利用する場合は、以下URLのような、Workatoのサービスを国内で提供する企業へご相談ください。

Risksoft https://www.ricksoft.jp/workato/ 

NECネッツエスアイ https://www.nesic.co.jp/solution/cloud/workato.html

株式会社日立ソリューションズ https://www.hitachi-solutions.co.jp/workato/

 

MuleSoft

MuleSoftとは、こちらもアメリカ・カリフォルニア州に本社を構えるソフトウェア会社が提供するiPaaSです。

MuleSoftは、2018年3月にSalesforce.comによって65億ドルで買収されたことで話題になりました。

MuleSoftでは「MuleSoft Anypoint Platform」を提供しており、このプラットフォームを利用することで、対応しているアプリケーションやデータ、デバイス接続のためのAPIの作成、接続、実装、管理を包括的に行ってくれます

このiPaaSの特徴は、すでに利用されているAPIやコネクタ機能を用いて再利用できるという点にあり、複雑に分散化していたアプリケーションのつなぎ目をこのiPaaSを導入することで一括管理が可能となります。

また、セキュリティの面でも万全の体制をとっており、ISO 27001、SOC 2、PCI DSS、GDPRを取得、データ保護の安全にも定評があります。

コカ・コーラやアシックス、Netflixをはじめ世界で1,600社以上が利用している人気のiPaaSとなっています。

Boomi

Boomiは、アメリカ・フィラデルフィア州に会社を構える企業ですが、2010年に当時のデル(アメリカ)に買収され、日本ではデル日本法人の一部署としてBoomi事業を展開しています。

Boomiは世界で8,200以上のユーザーを持ち、日本でのビジネスは2017年11月から始まりました。

Boomiのプラットフォームでは、オンプレミスやクラウドに散らばるすべてのアプリケーションを統合するiPaaS機能をはじめ、データの一括管理化や、取引先とのデータ共有、ワークフローを自動化するアプリケーションの搭載など、機能は多岐に渡ります

自動修復、自動更新を繰り返す高機能なiPaaSとして注目されています。

Anyflow

anyflow

Anyflowは国産初の、プログラミングが不要でSaaS間の連携ができるiPaaSシステムです。

日本のスタートアップ企業、Anyflow株式会社によって2020年10月にベータ版がリリースされたのち、本格的にサービスが始まりました。

「コードが書けない人でも簡単に作業を自動化できる仕組みがあれば便利ではないか」という考えから、ビジネス部門の人が自力で効率化できることを重視して開発されています。

自動化したいアクションを「ワークフロー」として管理画面上に作成しますが、ワークフローは自分でゼロから作るほか、既存のレシピ(テンプレート)を使用することも可能です

今後、連携SaaSとレシピ数の拡大が期待されますが、海外企業のiPaaSが未対応の国内SaaSシステムに対応していることが最大の特徴です。

海外製のiPaaSとAnyflowを併用している企業もあるということで、待望の国産iPaaSシステムであることがうかがえます。
また、ワークフローの作成について要件確認や仕様策定などのサポートがあることも、海外のiPaaSとの大きな違いです。

無料版や各有料プランのトライアルも用意されています。

Zapier

zapier

豊富な種類のサービス・ツール連携を、直感的なインタフェースでプログラミングすることなく簡単にできるiPaaSシステムです。

2012年にアメリカでサービスを開始し、ユーザー数は全世界で400万人以上、アメリカ国内だけではなくさまざまな国で利用されています。

3000種類以上もある圧倒的な連携サービスの数が特徴で、現在はセールスやマーケティングに関連する用途が中心です

引き金となる「トリガー(Trigger)」を受けて実行される「アクション(Action)」を設定し、この一連のフローを「ザップ(zap)」と呼びますが、ひとつのトリガーに対して複数の連続したアクションを実行するマルチステップのザップも設定できます。

プランによって使えるzapの上限数が異なるため、検討の際はzapier独特の用語を理解しておく必要があるでしょう。

UIや公式サイトが2021年3月の時点では日本語に対応していませんが、チャットワークやキントーンといった日本のSaaSシステムにも対応しています。

無料版と各有料プランともに、14日間の無料トライアル期間があります

DataSpider Cloud

DataSpider Cloudは、GUIを操作するだけでクラウド・オンプレミスを問わずハイブリッドにデータ連携が叶う日本製のiPaaSです。

同シリーズ製品のDataSpider Servistaは、2001年のリリース以来、国内外の多くの企業に導入されている実績のあるデータ連携ツールで、今回紹介するDataSpider CloudはそのiPaaS版として開発されました。

提供元の株式会社セゾン情報システムズは、ファイル連携ツールのHULFTも販売しており、HULFTは全国の銀行に広く導入されていることから、セキュリティ面で信頼感があることが大きな特徴です

DataSpider CloudはHULFTとの連携により、SaaS間だけでなく、ファイル、ネットワーク、データベース、ビッグデータなど異なる形式のシステムやデータの連携がプログラミング不要で可能になります

データ連携を作成したら、数種類のトリガー機能の設定によって、さまざまなタイミングで自動で処理を起動をすることができます。

国産のiPaaSシステムのため、半角カナや西暦、和暦の変換などの細かな実用面に配慮がなされていることにも安心感があります。

日本のSaaSサービスの連携は課題が多い

上記の例を見てもわかるように、iPaaSはアメリカから浸透してきているため、多くのシステムはアメリカのSaaSとの連携を中心に開発されています。

日本への進出を考える企業は、日本のSaaSとの連携を視野にいれて開発を進めていますが、現時点では日本のSaaSと連携できないケースはまだまだ多く見られます

iPaaSの強みは、利用しているアプリケーション同士を接続することで、データを有効活用したり、業務を効率化したりできることにあります。

利用しているアプリケーションがiPaaSおよびAPI等のデータ連携の仕組みに非対応であれば、対応できるアプリケーションに乗り換えられる可能性も出てきます。

また、これから新しくSaaSシステムを導入しようと思う企業であれば、iPaaSサービスの利用を見越して対応できるアプリケーションを選択するようになるため、連携の薄い日本のSaaSが取り残されていく、といった新しい課題も浮き彫りになっています。

iPaaSによって推進されるDX化

2018年に経済産業省から発表された「DXレポート」では、新たなデジタル技術を活用して、新たなビジネス・モデルの創出や、柔軟に改変するデジタル・トランスフォーメーションと、既存のレガシーシステムからの脱却を早急に推進する必要があると強調されました。

日本企業の多くは、既存システムが事業部門ごとに構築されて全社横断的なデータ活用ができなかったり、過剰なカスタマイズがなされて複雑化・ブラックボックス化しているために管理にリソースを奪われていたりする状況です。

このまま既存のシステムから脱却できなければ、DXどころか2025年以降、現在の約3倍である最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があると経財産業省は警鐘を鳴らしています。

この課題に対し、既存のオンプレミス・新しいクラウドシステムの橋渡しができるiPaaSシステムは、ひとつのソリューションとして日本企業のDX化に大きく貢献できるのではないでしょうか。

まとめ

クラウドサービスが普及しはじめたことで、企業は変わっていくための大きな手段を手に入れました。

日本の労働人口は毎年減少しており、これからも企業は少ないリソースを活用し、いかに効率的に事業を成長させるべきか、という課題がよりシビアになっていきます。

そこで活用されていくのがSaaSやiPaaSをはじめとしたクラウドサービスです。

システムを有効的に活用し、自動化できるものは自動化、その分限られた人材を使って新しい価値を生み出していく。

このように、システムと人がそれぞれ最高のパフォーマンスをすることで、企業は成長していくのです。

クラウドサービスは日本でも年々シェアを伸ばしてはいますが、まだまだこれからといった市場規模です。

アメリカから始まったiPaaSですが、今や日本でも、個人で当たり前のようにクラウドサービスが使われる状況を見ると、日本の企業にもしっかりフィットできることは見えています。

日本でのiPaaS市場が、今後どのような動きを見せるのか、今後も目が離せません。

SaaSジャーナルカテゴリの最新記事