当サイトSaaSサーチを運営する株式会社ジャックアンドビーンズでは、SFA(営業支援ツール)として様々なツールを使ってきました。
特に長く使っていたのは、サイボウズ社の『Kintone(キントーン)』と、SFA・CRMツールとして高いシェアを誇るSalesforce(セールスフォース)社の『SalesCloud(セールスクラウド)』です。SFAとして同時に両方使っていたわけではありませんが、それぞれ長い期間利用していました。
本コンテンツでは、KintoneとSalesCloudの両方を使ったことで見えてきた、それぞれの良さや特性について比較しながらご紹介いたします。
どちらのツールを使うべきか迷っている方、移行を検討している方の参考となれば幸いです。
KintoneとSalesCloud、根本的な違い
各ツールについて詳しく比較するする前に、まず最初にお伝えしておかなければならないことがあります。サイボウズ社のKintoneと、Salesforce社のSalesCloudは、そもそもツールのカテゴリが異なります。
SalesCloudはSFA(営業支援システム)およびCRM(顧客管理システム)と呼ばれるカテゴリに属しており、文字通り営業マンを支援するための機能に特化したツールです。
一方、KintoneはSFAでもCRMでもありません。もちろんSFAとしてもCRMとしても使うことができるのですが、厳密にはKintoneは非常にカスタマイズ性の高いデータベースツールという位置づけになります。
Kintoneを利用すれば、顧客の管理、契約書の管理、契約中案件の管理など、自社にまつわるデータを管理することが可能です。しかも、複雑なプログラムを覚える必要は一切なく、エンジニアの手を一切借りることなく、誰でも簡単にデータベースを作成・編集することが可能です。
なぜ両ツールは比較されるのか?
両ツールの根本的な違いについてご説明しましたが、なぜSFAとして作られたSalesCloudと、データベースツールであるKintoneは、SFAの領域においてどちらを使うかという比較がなされるのでしょうか。
いくつかの理由が存在します。
1つ目の理由として、Kintoneは「営業支援(SFA)パック」というSFA向けデータベースの基礎パックを導入することで、SFAに必要な要素を手軽に揃えられるという点があります。
汎用性の高いデータベースツールなので、SFAに必要なデータベースを揃えれば、SFAとしての利用が可能になるのです。
2つ目の理由は金額面です。
SalesCloudとKintoneの価格比較すると、Kintoneのほうが圧倒的に安価です。
SalesCloud … 1ユーザーあたり19,800円(税込)
※最も利用されているLightning Enterpriseの場合
Kintone … 1ユーザーあたり1,650円(税込)
※スタンダードコースの場合
最もベーシックとされるプランで比較したところ、1人あたりおよそ10倍の価格差があります。SalesCloud以外のSFAも、Kintoneのこの価格を下回るものは、なかなかありません。
しかも、KintoneはSFA専用ツール=SFAしかできないツールではありません。高機能なデータベースツールです。
そのため、高価なSFAツールを使わずとも、多様なことができるKintoneでSFA環境を構築することで、価格面だけではない様々なメリットを享受できる、というわけです。
導入の手軽さ、SFAとしての実用性も兼ね備えるKintoneは、十分にSFAとして比較対象となるサービスなのです。
KintoneとSalesCloud、当社での使い方
SFA、つまり営業支援ツールとしてKintoneとSalesCloudの両者を使う場合、その違いはどこにあり、どちらを選ぶべきなのでしょうか。
ここでは実際に、当社の営業部がSFAツールとして利用した事例をもとに、KintoneとSalesCloudの違いについて詳しくみていくことにしましょう。
【Kintone】SFAに限らず様々な部署で利用できる優れた柔軟性
当社では、既存の案件管理や、請求書管理、捺印管理などのさまざまな管理においてKintoneを利用しています。
多様なカスタマイズが可能で、必要になった時にすぐにぴったりのデータベースを作ることができる、という点は非常に利便性が高く、多様な場面で使用することができます。
それは営業の領域も同様で、当社ではSFA・CRM的な使い方をする「営業」データベースが存在しています。
営業データベースの使われ方
営業データベースを利用し始めたのは数年前。当時は営業専任の社員がおらず、案件対応を行っている社員がインバウンド型の営業を行うという体制をとっていました。
問い合わせがあると担当がつき、商談を進めます。各担当はお客様のデータをKintoneに記録し、進捗を更新していきます。
当社のサービスも限られた数でしたし、アウトバウンドの営業を積極的には行っていなかったのでリード数は多くなく、問い合わせをしてくださったお客様のみを管理するデータベースであればよかったので、非常にシンプルでした。
そのシンプルなデータをしっかり記録しておくことにおいて、Kintoneは安価にそれを実現することが出来るので非常に助かりました。
また、Kintoneは非常に柔軟にデータベースをカスタマイズすることができるため、ちょっとしたデータの変更や新しいデータ入力欄の追加など、必要なことは自分たちで簡単に実装することができました。追加料金もいらず、エンジニアに発注する必要もありません。
SFAに限らず会社全般の管理において、安価でありながらも非常に信頼できるデータベースツールです。
営業活動の多様化に伴い、Kintone管理が難しくなる場面も
その後当社のサービスは徐々に多様化し、アウトバウンドの営業を行うシーンも増えてきました。それに伴い、営業専任のチームも立ち上がります。
当初はそのままKintoneのみを使い続けていましたが、特にサービスの多様化の影響で、徐々にKintoneでの管理が難しくなってくる場面も生まれてしまいました。
営業チームのメンバーは以下のような思いを抱えていました。
・Kintoneはカスタマイズによって色々なことが出来るのは間違いない
しかし、サービス数が増えて営業の方法も様々になり、営業の進捗管理や状況の共有において必要な情報が一気に増えた
今あるリソースでは環境構築のためのKintoneのカスタマイズに人を充てるのが難しくなった
・SFAに求める機能が色々と増えており、Kintoneにはない機能も求めるようになってきた
一番の要因は、サービスの増加によりSFAでやりたいことが大幅に増えたことです。Kintoneは非常に柔軟にカスタマイズが出来るデータベースツールですが、そのデータベースをどんな形にするか、データベースをどう運用していくかを自分たちで決めて、そして実装する必要があります。そこになかなか手が回らなくなってしまったのです。
これらの要素を総合した結果、社内の営業以外のデータ管理では引き続きKintoneを使いつつ、営業部門のデータ管理および営業支援において、SalesforceのSalesCloudを利用してみることにしました。
【SalesCloud】営業に特化した様々な機能
SalesCloudの利用により、様々な効果を得ることができました。以下、実際の営業担当者の声をいくつかまとめました。
・営業向きのデータ管理体制が簡単に構築でき、複数サービスの営業管理が楽になった
・ダッシュボードで現状が視覚的に可視化され、自然と戦略に関する議論が起きるようになった
・SalesCloudには、SFAシェアNo.1を獲得したSalesforce社の営業ノウハウが組み込まれており、自社の営業の見直しや改善に繋げられる
SFAにSalesCloudを利用したことで、営業活動の効率化・改善に繋げることができました。管理に関する工数の削減だけでなく、Salesforce社のノウハウを取り入れられ、メンバーが目標に向かって戦略的に考える機会を多く提供してくれるという点は、SalesCloudならではのポイントでした。
ここまで両ツールについて紹介してきましたが、それぞれに特徴・良さがあります。次の項目では各ツールの良い点について詳しくまとめていきます。
SalesCloudとKintone、どう選ぶべきか?
実際にはこれらのツールの他にもSFAは多数存在するので、選択肢はさらに多くなるかと思います。
しかし、あまり選択肢を増やしても分かりづらくなってしまうので、今回は当社の過去の経験をもとにKintoneとSalesCloudのみにフォーカスしてまとめていきます。
それぞれどういった場面での利用に適しているか、それぞれの良さについてお伝えします。
【企業・サービスの立ち上げ段階】費用を抑えるならKintoneは魅力的
企業・サービスの立ち上げ時期は、営業の手法がしっかり確立されているわけではないでしょう。とはいえ場当たり的なデータ管理方法を取ってしまうと、将来的に後悔することになるかもしれません。データをしっかりと蓄積するためにも、SFAおよびCRMを入れておくべきではあります。
この段階では、ツールにあまり高い固定費はかけられません。費用を抑えて環境を構築するならば、Kintoneが魅力的です。
変化の激しい段階なので、営業フローが変われば、それに合わせてデータベースを調整し、適応させることが可能です。Web上にはベンダーやユーザーによって使い方に関する様々な情報が掲載されていますし、様々なバリエーションのデータベースの基礎パックも配布されています。営業に限らず様々な管理に利用でき、そして何と言っても安価で利用できるという点が大きなメリットです。
これらの理由から、企業・サービスの立ち上げ段階であれば、Kintoneが有力な選択肢となります。
とはいえ、営業方法が固まっていない段階だからこそSalesCloudを利用するという考え方もあります。その目的は、セールスフォース社の営業手法を取り入れつつ、自社の営業方法をより良い形で確立するためです。
実際、そういった理由で立ち上げからSalesCloudを利用し、ビジネスプロセスを可視化しながら着実に構築し、営業の最適化・効率化を実現した企業の事例も存在します。
SalesCloudはKintoneに比べると高価です。初期段階から強固な営業体制の構築を見据えて、人的・金銭的コストを投下できるのであれば、SalesCloudも選択肢となるでしょう。
【安定期以降】各ツールのメリット・デメリット
ある程度企業やサービスが安定し、営業のフローが確立している段階について見ていきましょう。
この状況下でまだSFAツールを使用していない場合や、既存SFAからの乗り換えを検討している場合を対象に、KintoneとSalesCloudのどちらを選ぶかについてご説明します。
当社の経験上、この段階では、SalesforceとKintoneどちらもSFAとしての選択肢となりえます。自社の管理体制と、目指す環境に応じて、それぞれ選択するのが良いと思われます。
Kintoneを選ぶメリット・デメリット
メリット
・シンプルで使いやすいUIのため、高いリテラシーがなくても、誰でも操作しやすい
・細かい調整を自分たちで行える
・安価である
【参考価格】Kintone … 1ユーザーあたり1,650円 (※スタンダードコースの場合・税込)
→ツール利用の学習コストが低く、導入・浸透しやすい
デメリット
・複数のサービス、複数の営業フローが並行している場合は、それぞれに合わせたデータベースの調整が必要で大変(当社がまさにこれでした)
・もっとこういうことがしてみたいという時に、対応していなかったり、知識がないとうまく環境を構築できない可能性がある
・カスタマイズにかかる人的コスト・学習コストが高め
Kintoneが適しているのは?
営業フローが確立されており、なおかつあまり複雑でない場合は、Kintoneでの管理に向いているかもしれません。
当社においても、扱うサービス数が少なく、営業フローが限られていた頃は、Kintoneの管理で十分にまわせておりました。
扱いやすいUIになっているので、今導入しているSFAがわかりにくく使いこなせていない、といった場合の乗り換えにも適しています。
一方、Kintoneを選ぶ際に考慮しておくべきなのは、「カスタマイズにかかる人的・学習コスト」です。ベーシックな営業管理からはみ出すことを行いたい場合に、カスタマイズがハードルとなって進まない可能性があります。
例えば、多くの商材、多くの営業手法が並行しているような企業は、Kintoneを使うと多くのカスタマイズが必要となるかもしれません。簡単に済むカスタマイズもあれば、手こずる場合もあります。
SalesCloudを選ぶメリット・デメリット
メリット
・SFAに特化しているため、営業のための環境構築が手軽にできる
・Salesforce社の営業ノウハウがツールに活かされている・活用できる
・利用者の交流イベントやユーザー会が盛んに行われており、運用手法の共有・事例共有の場が多い
・春、夏、冬に定期的なアップデートがあるため、頻繁に機能がブラッシュアップされる
デメリット
・Kintoneに比べると高価
【参考価格】
SalesCloud … 1ユーザーあたり19,800円(税込)
(※最も利用されているLightning Enterpriseの場合)
Kintone … 1ユーザーあたり1,650円(税込)
(※スタンダードコースの場合)
・操作自体は難しくないが、様々な機能を使いこなすための学習コストが大きくなる
SalesCloudが適しているのは?
メリットにある「Salesforce社の営業ノウハウの活用」は重要なポイントです。SFAのシェアが世界でNo.1のツールの営業手法を参考に、自社の営業フローを見直すことができるわけです。当社の営業メンバーも、その点は非常に大きなメリットだという感想を持っています。
また、事業のさらなる拡大や営業の多様化を見据えている場合は、SalesCloudを利用したほうがメリットが大きくなるかもしれません。
まとめ
以上、KintoneからSalesCloudそれぞれの良さ、そして各ツールが適する場面についてのご紹介でした。
どちらもメリット・デメリットは存在するので、企業・サービスによって最適なものが異なります。
使っている既存のツールと連携できるかも重要なポイントとなるので、心配な場合は各社の仕様表をご確認いただくか、お問い合わせを行っていただいたくのがベストです。
本稿を参考に、使い方に合ったSFAの導入をご検討いただければと思います。