2014年以降、日本におけるマーケティングオートメーション市場は急激に加速してきました。大手~中小企業まで、様々な企業において導入数が伸び続けています。
今回は中小企業がマーケティングオートメーションを導入する際のツールの選び方と、おすすめのツールをご紹介しますが、まずはマーケティングオートメーションについて簡単に說明しておきましょう。
マーケティングオートメーションとは、企業が人の手を使って行っていたマーケティング活動を、システムを使って自動化することを意味します。
関連するすべてのデータを一括管理することで、より効果的に、効率的にマーケティングが行えるようシステムがサポートしてくれるため、中小企業をはじめ多くの企業が導入を開始しています。
マーケティングオートメーションで、何ができる?
マーケティングオートメーションの活用を活用することで”できること”について、大きく3つご紹介します。
中小企業ではどのような活用ができるのか、参考にしてみてください。
マーケティングの自動化・効率化
まずマーケティングとはどのような活動を指すのか、全体像を見ていきましょう。
大まかに、以下のようなステップを踏んで行われるのがマーケティングです。
・市場調査
・市場のセグメンテーション
・ターゲティング
・ポジショニング
・4P分析
・マーケティング施策の実行
・マーケティング施策の結果を分析
上記がすべてではありませんが、マーケティングとして行われる内容は多岐に渡ります。
このうち多くの部分は人間の創意工夫、つまりアイデアが必要な「考える」作業です。どのようなマーケティングを行っていくか、企業のマーケティング担当者がアイデアを練る必要があります。
一方、「マーケティング施策の実行」については、「作業」が多く含まれます。例えば「メールの送信」「サイトの複数回訪問者のデータを集め、電話でアプローチする」など、条件が決まっていて、あとは実行していくだけという事柄が多くあります。
こういった施策実行部分の効率化において、マーケティングオートメーションは効果的です。
事前に設計した条件をもとにしてマーケティングオートメーション上で設定を行っておけば、「定期的なメール配信」「サイト訪問数などを集計して顧客の見込み度を算出」などの作業を自動的に行わせることが可能です。
これにより、施策の実行部分にかかる作業をマーケティングオートメーションによって削減できれば、マーケティング担当者はその他の作業に時間を充てることができ、効率化に繋がります。
One to One マーケティングの促進
情報収集の手法が多様化し、いつでもどこでも欲しい情報が手に入る現代では、顧客ごとにパーソナライズされた情報を活用してアプローチするOne to Oneマーケティングが必要です。
情報を取得する顧客側にとって、自分の欲しい情報が欲しいタイミングで提供されることが当たり前となりつつあります。
このようなOne to Oneマーケティングを中小企業が行うためには、顧客のコンディションを常に把握できている必要があります。これは具体的には、あなたのサイトをどれくらい見に来ているか、送ったメールをきちんと開いているかなどの情報から、顧客の興味関心度合いを測ることです。
マーケティングオートメーションを利用することで、顧客の情報を精緻に管理、常に顧客の最新データが可視化できる状態となります。
例えば短期間で何度もサイトを見に来ているなら、購入を迷っているなどかなり興味があることが伺えます。このタイミングを狙ってメールや電話で声をかけ、見ていたページに関連する情報を提供すると、購買にぐっと近づくかもしれません。
闇雲に見込み顧客に対して電話をしたり、メールを送ったりするよりも、非常に効率よくアプローチをすることができます。
顧客のコンディションが可視化されることで、必要な情報をタイミングを逃すことなく顧客へ提供できるため、中小企業においても市場開拓の可能性が高まっていくのです。
成果のレポーティング
マーケティングオートメーションでは、顧客データの蓄積とともに、誰にどのようなアプローチを行ったのか、またその結果は、という効果情報もデータで一元管理することが可能となります。
1顧客に対するアプローチ方法はもちろんひとつではありませんし、One to Oneマーケティングによって顧客ごとに違った施策が打たれる場合には、検証するのは容易ではありません。
しかしマーケティングオートメーションでは、例えば顧客が最初に興味を抱いたものはなにか、その後のリード期間はどの位か、何がきっかけで購買へとつながったのか、などのデータを元に、マーケティングROI(投資した資本に対してどれだけの利益を得られたかという指標)が明確になります。
マーケティングオートメーションによって行動の成果が可視化されるため、常にPDCAを回しながらより効果の高い状態へと企業を導いていくことができるのです。
中小企業にこそマーケティングオートメーションが必要な理由とは?
マーケティングオートメーションのような業務のシステム化やデータの利活用は、大企業でなければ導入できないと思われがちですが、実は中小企業にこそ必要です。
続いては、マーケティングオートメーションが中小企業にこそ必要な理由を3つご紹介しましょう。
マーケティングの人手不足を補える
昨今の日本では「就活は買い手市場」とも言われるように、優秀な人材を確保することは容易ではありません。
特に中小企業においては、必要な人員数を集めることも難しいという企業も少なくないでしょう。しかし人材不足だからと言って企業は売上を落とすわけにはいきません。
そのような状況では、少ないリソースを最大限活用し、効率的・効果的に業務を行うことが中小企業では必要になってきます。
マーケティングオートメーションを活用することで、マーケティングを人の手で行う工数を削減、データをフル活用することで、少ない人材で最大限のパフォーマンスを発揮できるよう業務を仕組み化できるのです。
今までは人手が足りずに実践していなかったマーケティング施策についても、マーケティングオートメーションを利用して挑戦することが可能になるかもしれません。
アイデアを柔軟に反映できる
マーケティングオートメーションでは、施策の実行からレポーティングまでをワンストップで行えるため、すばやくPDCAを回すことが可能です。
この機能を十分に活かすためには、どんな施策を打つか、結果を受けてどう改善するかなど、すばやく状況を判断し迅速に意思決定をしていくことが求められます。
このようなスピーディーな決断は、大企業よりも中小企業のほうが行いやすいのではないでしょうか。これがマーケティングオートメーションの利用時には有利に働くのです。
現場が導き出したアイデアを短サイクルで実行・効果検証を繰り返すためには、中小企業のような意思決定の早さが必要となっていくのです。
営業の効率化にもつながる
中小企業の営業領域においてもマーケティングオートメーションは効果を発揮します。
営業活動の本領域は商談・受注ですが、その商談に導くまでには多くの工数がかかるのが現状です。
無理やり商談の機会を作ることもできますが、受注確度が低ければ無駄な業務を増やすだけとなります。
マーケティングオートメーションでは、メルマガの自動配信やチャット機能、展示会の案内など単純業務を自動化することが可能ですし、さらにメールの開封率や問い合わせ履歴などもすべてデータとしてストックでき、その結果を元に顧客を”スコアリング”することが可能です。
興味関心度合いが高い顧客であれば、スコアが高くなります。この機能を使って顧客を自動的にスコアリングすることで、営業は確度の高い顧客を見極めてアプローチができるため、受注率もあがり、中小企業でも営業の効率をあげることができるのです。
中小企業のマーケティングオートメーションの選び方
では中小企業はどのような観点でマーケティングオートメーションを選べば良いのでしょうか?
具体的にご紹介しましょう。
多機能なほうが良いとは限らない
マーケティングオートメーションは、機能性に応じて料金が大きく変わります。
マーケティングオートメーションの導入は、工数の削減や売上アップを目的としていますが、それに対してコストが上回ってしまっては本末転倒です。
自社でマーケティングオートメーションを利用する際に、どんな機能が必要となるのかを見極めて選ぶ必要があります。
マーケティングオートメーションにはさまざまな機能が搭載されています。
・リード管理
・メールフォームの自動作成
・メールの自動配信
・WEB解析
・スコアリング
・シナリオ機能
・セミナー管理
・営業支援システム連動
・CRM連動
・広告連動
このほかにも様々な機能がありますが、多くの企業はこれらの中から必要な機能を選んで利用しています。
マーケティングオートメーションは多機能なものを選べばその分コストがかかるということも多いため、機能が多ければいいというものでもありません。
特に中小企業においては必要のない機能もありますので、マーケティングオートメーションツールを選ぶ際には活用できるかどうかを見極めながら、必要なものだけ選択するようにしましょう。
はじめての導入であれば、あまり詰め込みすぎず、シンプルな機能で低価格なものを選んでも良いと思います。
シンプルな機能で費用を抑えた、中小企業におすすめのMAツール
中小企業が導入しやすいマーケティングオートメーションツールをご紹介します。
・機能がシンプル(過剰に多機能ではない)
・価格を抑えられる
というポイントを重視して選定しました。
マーケティングオートメーションツールによって同じ機能でもそれぞれ特徴がありますので、比較検討してみてください。
※金額は2019年7月19日 記事作成当時のものです
SATORI
2014年、企業へのシステム開発支援事業を行っていたトライアックス株式会社の社内ベンチャーとしてスタートしたのがSATORIです。現在はSATORI株式会社がサービスを提供しています。
導入実績は400社以上、マーケティングオートメーションツールは海外で開発されることも多いですが、SATORIはすべて国内で開発されており、日本語でのサポートも強みのひとつとしています。
【機能/一部抜粋】
・リードマネジメント(データ管理・データ検索・データエクスポート)
・リードトラッキング(複数ドメインのトラッキング、アクセス企業リスト化、タグ管理)
・ランディングページ制作(ウェブページ制作、画像アップロード)
・メール機能(メール配信、シナリオ作成)
・セグメント(URL条件、パラメータ条件)
・レポーティング(目標設定、セグメントレポート)
~オプション機能~
・データ提供(カスタマーデータ、DMPデータ、アクションデータ)
・独自ドメイン(ウェブページ、メールクリック計測用)
【料金設定】
・無料トライアルあり(最長1ヶ月程度)
・初期費用/330,000円
・月額費用/162,800円
※利用制限あり、超過分は従量課金
※オプション機能追加の場合は別途料金あり
※すべて税込表記
b→dash
「いつでも」「ひとつで」「誰でも」をコンセプトに展開されるマーケティングオートメーションツールです。
取り込んだデータは瞬時に統合され効果的にデータ活用、シンプルで使いやすいUIUXも特徴です。
また、中小企業向けのb→dash Liteという低価格なサービスもあります。
【機能/一部抜粋】
・データキッチン(データ処理・加工・活用システム)
・データ統合(外部ツール連携、ビジネスデータ連携、スコアリング)
・メール(クロスチャンネルシナリオ、購入促進メール)
・Web接客(サイト訪問顧客へのバナーやリマインドアプローチ)
・BI(アプリ・Webアクセス解析、CPM分析、カスタマージャーニー分析)
・LINEビジネスコネクト(LINE活用のアプローチ)
・広告連携(データを使ったデジタル広告の運用)
・SMS配信
・レコメンド(メール、レポート、スコア取込)
・CMS(各種フォーム作成)
【料金設定】
・初期費用/要問合せ(b→dash Liteは無料)
・標準機能/要問合せ(b→dash Liteは5.5万円~)
※利用機能によって価格変動
List Finder
中小企業を中心に、国内で1,500アカウント以上の導入実績を持つマーケティングオートメーションツールです。
【機能/一部抜粋】
・名刺データ化代行
・企業属性付与(法人番号・URL・業種など名刺以外の情報を付与)
・フォーム作成(セミナー申込、資料ダウンロード)
・メール配信(ステップメール、ABテスト配信、レポーティング)
・アクセス解析(閲覧ページ、滞在時間、流入回数)
・PDF閲覧解析(PDFのwebコンテンツをメール配信、閲覧ページ・時間の把握)
・セミナーページ作成(案内ページ、申込フォーム)
・スコアリング
・優先リード通知
・アプローチ管理(営業活動報告、成果の可視化)
【料金設定】
・無料トライアルあり(最長20日間)
・初期費用/110,000円
・月額費用/ライト43,780円、スタンダード65,780円、プレミアム87,780円
※月額費用により機能制限あり、PV数・顧客データ数によって従量課金
HubSpot
100ヶ国以上、48,000社の活用実績を持つHubSpot。
CRM機能を無料で導入できることが特徴で、CRMを基盤に各種機能を連動することでマーケティングオートメーションを強化していくことができます。
【機能/一部抜粋】
・CRM機能(顧客情報、コミュニケーションの可視化)
・ウェブサイトの構築(ウェブページ、ブログ、ライディングページ)
・コンテンツ配信(SEOアドバイス、コンテンツ・画像・見出し・CTAの選択)
・顧客動向追跡(顧客コミュニケーションの記録・整理)
・メール自動配信
・テンプレート作成
・メールデータの蓄積(開封率、コンタクト情報)
・チャット機能構築
【料金設定】
・初期費用/なし
・月額費用/Starter6,600円~、Professional105,600円~、Enterprise422,400円~
※月額費用により機能制限あり、コンタクト数によって従量課金
まとめ
中小企業がマーケティングオートメーションを導入する際のポイントと、おすすめのツールをご紹介してきました。
中小企業ではシステムに多額のコストをかけられない場合も多いため、必要なマーケティングオートメーションをしっかり見極めて導入を進めていきましょう。