生産年齢人口の減少に伴い、企業は年々人材を確保することが困難になっています。しかし、世界の企業と競争をしていくためには、人手不足だからといって生産性を落とすことはできません。
とはいえ、人間1人あたりの仕事量にも限界があるため、近年は人手不足を解決する手段として「RPA」が注目されています。
ここでは、RPAとは何か、そしてRPAを導入することのメリットなどについてご紹介します。
RPAとは?
RPAは、ロボットによって業務の自動化を行う取り組みのことです。
事務職などのホワイトカラー業務を、社員ではなくソフトウェア型のロボットが代行することで自動化します。
RPAの活用は海外が先行しており、日本でRPAが広がる以前から、様々なシーンにRPAが導入されていました。
RPAのそもそもの定義としては、ロボットによる業務の代行や自動化をするツールを指すものではなく、ロボットと社員が協働することで企業全体の変革をすることを指しますが、昨今はRPA=ツールとして広く認知されています。
RPAが注目されている理由
RPAが注目されている背景としては、日本は少子高齢化によって生産年齢人口が降下の一途を辿ることが明白であることが要因の1つです。2060年には3人に1人が65歳以上になることが予想されている日本では、すでに人材不足が問題になっています。
また、人材不足に加えて働き方改革の推進により、企業は残業時間の削減を迫られています。そのため、企業は少人数でいかに効率的に業務を遂行するかという課題に直面しています。
そこで、RPAを導入し、単純作業をロボットに任せることで、社員はロボットができないクリエイティブな作業に専念することが可能になるのです。さらに、人間の作業スピードよりも早く正確に業務を行うことができるので、通常よりも作業効率がアップすることが期待できます。
RPAでできること
RPAを利用することで、定型業務を効率的に処理することができます。
定型業務と言っても幅広い内容があるため、いくつかRPAが実際に活用されている例をご紹介します。
例1:請求書の処理や発注の処理作業
RPAはルールが決まっていることをこなすのが得意です。そのため、販売データから請求書の作成作業や、顧客の入金と売掛金の消し込み作業などを自動化させることで業務の効率化が期待できます。
ただし、ルールに沿った作業ではたしかにRPAは効果を発揮しますが、状況に応じて臨機応変に対応しなければいけない作業はRPAの効果を発揮するのは難しいでしょう。
例2:電話やメールのサポート業務
新規顧客へのメール営業など、1日の業務の中で作業に多くの時間を割くことになるメール作成や送受信をRPAに任せることで、手作業では実現不可能な大量のメールを処理することができます。また、レポート共有・進捗状況も自動化ができるので、改善点が見つけやすくなるでしょう。
さらに、電話業務においても、かかってきた番号をデータベース上にある顧客情報を参照してオペレーターに提示することで、素早い対応を実現できます。
例3:分析や情報収集作業
RPAは、ルールに従って行う作業を得意としています。固定の形式のデータから情報を取得する作業など、ルールは明確なものの手作業では工数の掛かる作業はRPAの得意とする業務です。人の手では記入漏れや時間を要する分析や情報収集作業を、自動化することでミスなく時間を短縮して行うことができます。
動作の仕組み
RPAは今まで人が行ってきた作業の一部を、ルールに従って自動的に行うツールです。そのため、RPAを正確かつ効率的に活用するためには、設定するルールの質が何よりも大切です。
したがって、事前に自動化させたい業務の流れが明確化になっているかどうかは、そのままRPAの作業クオリティに影響してきます。
また、以前はRPAを利用するにはプログラミング技術をある程度理解している必要がありました。しかし最近は、人が行った作業を記録することでルール設定ができるRPAツールや、直感的な操作で作業のプログラムが組めるRPAツールも登場しているので、必ずしもプログラミング技術が必要ではなくなってきました。
RPAを導入するメリット
ここでは、RPAを導入することで生まれるメリットについてご紹介します。
業務の効率化、高速化、生産性の向上
人が作業すると、基本的には集中力が切れたり、疲れたりして作業スピードにむらが出てしまいます。しかし、RPAはロボットなので人間とは異なり、休みなく常に一定のスピードで稼働することが可能です。
また、人の作業スピードよりも早く業務を遂行できるので、今まで半日費やしていた業務も数分で終わらせることができます。
ルールに基づいた定型業務をRPAに任せて、人はコミュニケーションをとったり、アイデアを出したりする必要のある業務に専念することで、効率的に業務を行うことができるでしょう。
その他にも、RPAの導入にあわせて伝票処理や申請書など紙媒体で行っていた作業を電子化すれば、業務の簡略化やペーパレス化などにもつかがります。
ミス防止
データ入力などを手作業で行う場合、入力ミスや見間違いが生じる可能性があります。しかし、RPAによって人が行う作業を代行すれば、ミスをなくすことができるのです。
人はどんなに気を付けて作業をしていても、必ずどこかでヒューマンエラーを起こしてしまうものです。一方、RPAであれば、ルールや定義さえしっかり作り込んでしまえば基本的にミスが生じることはありません。
また、RPAは正確に業務をこなしてくれるので、今まではダブルチェックでミスを防止していた業務も、チェック作業から解放されることでしょう。
コスト削減
企業の経費の大部分を占めているのが人件費です。特に事務や経理などの部門は、データ入力やチェック作業など、単純作業に追われて残業時間が膨れ上がってしまうケースもあるでしょう。
しかし、RPAを導入すれば、人が1日の大半を費やしていた単純な作業を数分で処理できるので、人は浮いた時間分を他の業務に充てることができます。また、入力作業などが一瞬で完了することは、次の業務フローへ早く移れるようになるため、業務全体の流れを効率化できるのです。
この効率化により、残業や休日出勤が減れば、今までの業務クオリティを落とすことなく、人件費の削減にもつながります。
人材配置の最適化
RPAの導入は、売上や利益に直結する「コア業務」と、コア業務をサポートする「ノンコア業務」の明確な棲み分けを可能にします。
人がコア業務に専念できることで、業務の幅が拡がるとともに社員のスキルアップにも繋がり、企業利益と企業の成長が期待できるでしょう。
RPAの短所
続いて、RPAの短所についてご紹介します。
RPAには多くのメリットがあるものの、万能ではありません。導入の際にはいくつか注意すべきポイントがあります。
エラーへの対応
RPAは、ルールに基づいた業務では効果を発揮しますが、これはつまりルール通りにしか動かないということでもあります。
データの一部が通常とは異なる形式になっている場合など、人間であれば状況に応じて柔軟に対応できるような事柄も、RPAを利用した場合はエラーとなってしまいます。
エラーが起きた場合、人の手による修正や、ルールの見直しが必要となります。
設定に手間がかかる場合がある
RPAを自社でゼロから導入する場合は、シナリオの設定などは不慣れなうちは時間がかかるので、導入初期から期待通りの活躍をしてくれるとは限りません。
また、RPAが思った通りに業務をこなしてくれない場合は、原因を突き止めて検証する作業も発生します。
このように、全てを社内の人員で賄おうとすると設定に手間がかかる恐れがあります。
このような手間を避けたい場合は、RPAの導入をコンサルティング企業に依頼することで、スムーズな導入が可能です。
コンサルティング企業は、社員から業務のヒアリングを行って自動化させる業務の判別や、RPAの知識が不足している社員に対して研修してくれるケースがあります。また、マニュアルも作成したうえで、万が一不具合が発生した場合はサポートしてくれるので安心です。
セキュリティ問題
RPAに任せる作業が機密情報でない場合は何も問題はありません。
しかし、RPAに企業の機密情報を扱わせる場合は注意が必要です。RPAを導入して業務の自動化をすることで、セキュリティや権限を統治する「ITセキュリティガバナンス」の問題が生じます。
したがって、慎重な対応でRPAの統治をしなければ、ネットに繋がっているサーバにインストールしたRPAに対して不正アクセスが行われて情報漏洩してしまうなどのリスクがあります。
RPA導入の手順
RPAを導入する際の大まかな流れについてご説明します。
まず初めに、RPAによって自動化する業務を見定める必要があります。自動化の対象となる業務の基準としては、複雑な作業でないこと、イレギュラーが発生しないことがポイントとなります。業務をフローチャートにするなどして整理しておきましょう。
次に、RPAに任せる業務の範囲を明確化するために、業務量を可視化し、その業務に必要となるソフトウェアを整理します。社内のプロセスの全体構成を表す「プロセスマップ」を作ることで、業務が可視化しやすくなり、RPAが行う業務範囲と人が引き続き行う業務の線引きがしやすくなるでしょう。
業務範囲が明確化に決まったら、RPAの試験導入を行います。導入当初はエラーや誤作動がつきものです。何回もテストを重ね、動作確認や課題点を洗い出して改善を図ります。
テストで動作に問題ないことが確認されれば、いよいよ本格導入です。テストを重ねたとはいえ、実際の運用においてもしばしば改善が必要な点が見つかります。そのため、導入後は定期的に業務のモニタリングや評価を行い、よりRPAの精度と効率を高めていきましょう。
RPAの選び方
RPAの種類
RPAツールは、「サーバー型」と「デスクトップ型」そして「クラウド型」に大別されます。それぞれの特徴をみていきましょう。
デスクトップ型
デスクトップ型は、RPAツールがデスクトップ上で動くタイプです。
PCにソフトウェアを導入するのみで利用できるため、手軽にRPAを使うことができます。
導入したPCごとにRPAの設定・管理が行えるため、各ユーザーで自分の作業に合わせて独自にカスタマイズすることができるという利点がありますが、一方で中央で一括管理ができないというデメリットもあります。
デスクトップ型はPC1台分から導入できるため、小規模・低コストで利用することができます。
サーバー型
サーバー上でRPAのプログラムを動かすのがサーバー型です。
このタイプのメリットは、複数のPCをまたいでサーバー上のプログラムが利用できる点です。組織内の複数のPCで、同じプログラムを使う必要がある場合などに便利です。
また、サーバー上にある複数のプログラムを同時に動かすといった使い方も可能です。
デスクトップ型では難しい容量の大きいデータを扱う処理も、サーバー型なら問題ないでしょう。
とはいえ、デスクトップ型に比べるとやや費用は高くなります。
クラウド型
最後にご紹介するのはクラウド型です。
クラウド上でRPAのプログラムを動かすため、自社のサーバーを構築する必要がないなど、全体的にコストを抑えることが可能です。
ただし、行える操作がWeb上での操作に限定されるため、例えばPCにインストールされているソフトウェアを使った作業を自動化するといったことはできません。
自動化したい操作がすべてWeb上で完結できる場合には適していますが、そうではない場合は注意が必要です。
また、処理に必要なデータをクラウドにアップロードすることになるため、セキュリティ面のリスクがあります。安全性などを十分に確認した上で導入を進めるようにしましょう。
サポート体制
RPAを活用して業務効率を改善するためには、RPAをしっかりと使いこなせなければなりません。
そのため、ツールのマニュアルやレクチャーなど、活用のためのコンテンツが十分かどうかという点は重要です。
また、困ったときに問い合わせが可能かなど、ベンダー側のサポート体制が整っているかもしっかり確認しておくとよいでしょう。
おすすめのRPAツール
最後に、おすすめのRPAツールを4つご紹介します。
Robo-Pat DX
「Robo-Pat DX」は、株式会社FCEプロセス&テクノロジーが提供しているツールです。
「Robo-Pat DX」の主な特徴は、プログラミング技術がない事務職社員でもロボット作成ができる点で、誰でも簡単に作業の自動化設定を行うことができます。しかも、アプリケーションを問いません。
サポート体制も充実しており導入前の無料トライアルや勉強会の開催、ロボット作成やトラブルで困っているときに、24時間のメールサポートが活用できます。
Robo-Pat DXhttps://fce-pat.co.jp/
PINOKIO
「PINOKIO」は、株式会社フューチャー・アンティークスが運営しているツールです。RPAツールの中でも安価な価格設定となっており、月11万円〜で利用できるため、予算の少ない中小企業の導入率が高いです。
デスクトップ型のツールで、ドラック&ドロップで操作するだけの初心者でも簡単にRPAを開発できます。サポート面についても安価なツールでありながら、導入前からのヒアリングや導入時の専任スタッフのフォロー、導入後のRPAツール定着に向けた定期的なサポートなどが充実しています。
UiPath
「UiPath」は、株式会社UiPathが運営しているツールです。2018年にはシェアNO.1にも輝き、RPA業界を牽引するベンダーです。
サーバ型・デスクトップ型の2種類のRPAを用意しているので、自社にあった運用方法が選びやすい点が特徴です。また、各ロボットのスケジュール管理やモニタリングもできるのでセキュリティ面でも安心です。サポート面では、使い方の分かる映像講座やUiPathユーザー同士のコミュニティを開設するなど、豊富なサポート環境を整えています。
BizRobo!
「BizRobo!」は、株式会社RPAテクノロジーズが運営しているツールです。BizRobo!は、国内実績ナンバーワンで1,560社以上の国内企業に選ばれています。
サーバ型のRPAツールなのでロボットをサーバ上で一括管理することが可能で、組織的な活用がしやすい点が特徴です。
また、サポート面には基礎研修がついているなど、導入時の管理体制や今後の企業規模を考えたサポート体制が充実しています。
まとめ
RPAは、今後の高齢化社会に伴う生産人口の減少を助ける救世主として活躍が期待されます。また、人間が行ってきた作業よりも正確に素早く業務を遂行するため、企業全体の効率化にも役立ちます。
この記事でご紹介したRPAのメリット・デメリットを把握したうえで、RPAによる業務の効率化に取り組んでみてはいかがでしょうか。