「マーケティングオートメーションの導入を検討しているけれど、何から手をつければ良いのかわからない」と頭を抱えているマーケティング担当の方はいらっしゃいませんか?
マーケティングオートメーションは日本ではまだ導入が進んでいるとは言えないのが実情です。
事例は少なく、日本における適切な運用方法も確立されていません。
マーケティングオートメーションは、マーケティングの施策やプロセスを自動化し、人力で行なっていた業務を劇的に効率化することができますが、導入から活用までにはたくさんの課題ややるべきこと、注意すべき点が多く、導入は簡単ではありません。
導入後にきちんと効果を出すためには、関連部署が一丸となって協力・連携し、新しい情報管理体制やオペレーションを作り上げる必要があります。
導入までの長いプロセスを出来るだけ効率よく進めるために、事前に重要な点をきちんとおさえておきましょう。
この記事では、マーケティングオートメーションを導入する際におさえておくべきポイントや具体的な設計項目、注意すべき点まで、網羅的にご説明します。
マーケティングオートメーションとは
マーケティングオートメーション(Marketing Automation)はMAと略されることもあり、マーケティング業務を自動化するための仕組みやそのためのツールのことを指します。
アメリカで生まれたマーケティングの概念であり、日本でも近年、徐々にその概念が普及し始めています。
マーケティングオートメーションの主目的は、顧客を育成して見込み顧客をピックアップし、営業など次のフェーズに渡すことです。
今までマーケティング担当が人力で行なっていたチラシやDMの作成、メルマガ配信などの施策は、マーケティングオートメーションを導入することでオートメーション化できるかもしれません。
導入前に必ずおさえておくべきこと
マーケティングオートメーションは「導入すれば勝手に仕組みが回り始める」という類のツールではありません。
マーケティングオートメーションを効果的に活用するためには、導入前に目的と目標を明確にし、運用の担当者をつけて運用開始する必要があります。
何のために導入するのかを明確にする
まずはじめに、「何のためにマーケティングオートメーションを導入するのか」という目的を明確にすることが重要です。
マーケティングオートメーションを導入する最終的な目的は、マーケティングオートメーションで自動化して得た成果を営業などの次のフェーズに引き渡し、そこでの成果に繋げることです。
ここを見失うと、マーケティングオートメーションで作業や施策をオートメーション化することそのものが目的だという漠然とした思い違いが生まれてしまい、「ただメールを送っている」「ただLPを作成している」「ただサイト訪問データを記録している」といった、手段と目的を混同してしまう状況が起きてしまいます。
マーケティングオートメーションはあくまで「顧客管理や育成をオートメーション化するツール」であり、導入自体が目的とならないようにしましょう。
また、マーケティングオートメーション導入の効果と目的を混同しないように、切り分けて考える必要もあります。
例えば、マーケティングオートメーションを利用して自動化した次のフェーズが「営業」の場合、マーケティングオートメーションの導入目的は営業部門での成果である「商談成立」や「制約」、「LTV向上」であるべきです。
「見込み顧客のピックアップ・リスト化」や「見込み客とのエンゲージメント強化・拡大」はあくまでマーケティングオートメーション導入の効果である点に注意しましょう。
上記は営業部門の目的例です。自社の業種や業態によって、自社に合った目的を設定し、明確化しておきましょう。
目的を固めきれないまま導入することになってしまった場合も、目的が決まった時のためにデータは蓄積しておくべきです。
本来は導入前に目的を明確にすべきという点を念頭に、早めに「何のために導入するのか」について関係者のコンセンサスを取るようにしましょう。
目標値を設定する
目的を明確化したら、それにともなう目標値を設定しましょう。
「商談成立数を◯%アップさせる」「LTVを◯%向上させる」といった、目標を達成できたかどうかを客観的に判断するための具体的な数値目標を決めます。
具体的な目標値を設定したら、その目標値が適切かどうかを一定の期間検証し、必要に応じて目標値の修正や改善を重ねましょう。
設定した目標値は現実的に達成可能そうか?マーケティングオートメーションの運用設計担当者と現場担当者の間に認識の齟齬はないか?などを定期的に検証し、効率的なPDCAサイクルを回せるようにしましょう。
マーケティングオートメーション活用の担当者を確保する
目的を明確にし、具体的な数値目標を設定できたら、マーケティングオートメーション導入から目標達成までの一連のプロセスを実行に移すための担当者を置くべきです。
マーケティングオートメーション活用の担当者は、マーケティング部門の専門知識だけでなく、次のフェーズの部署(営業など)との連携や流れを理解し、部署間の橋渡し役になれる人物でなければ務まりません。
また、マーケティングオートメーションツールへのリテラシーが高い人、もしくは理解して活用できるポテンシャルの高い人材でないと、有効活用するのは難しいでしょう。
そのような人材を探し出すのは難しいことかもしれませんが、担当者の専任ミスがマーケティングオートメーション導入のボトルネックとなるケースも多いということを念頭に置き、慎重に人材を配置すべきです。
導入後の設計ステップ
マーケティングオートメーションを活用して効果を得るためには、事前の入念な設計が欠かせません。自社の状況や環境に合わせて、適切な設計をを行うことが大切です。
設計しなければならないポイントは多岐に渡ります。
初期の人的コストがかかってしまいますが、マーケティングオートメーションしっかり活用できるよう、長期的な視点を持ち、一つ一つのステップを確実にやり遂げていきましょう。
現状の顧客が辿るステップを整理する
まずは、今いる既存顧客がどのようなステップを踏んでコンバージョンしているかを確認し、整理します。
いわゆる「カスタマージャーニー」とも呼ばれるものです。
現状の顧客情報の扱いを整理する
次に、自社の持つ顧客情報の管理状況を整理します。
自社の持つ情報にもかかわらず、適切な管理・把握がされていないケースが多いのが、この「既存顧客の情報」です。
リストが複数存在する場合は、リスト間の重複チェック、名寄せを行い、リストを一つに統合するのが望ましいでしょう。
また、既存顧客へのアプローチ履歴や現状のステータス、結果の管理方法も確認し、整理しておきます。
整理した情報をもとにアプローチを設計する
現状の把握・整理が終わったら、その情報をもとに顧客へのアプローチを設計します。
マーケティングオートメーションでどのようなカスタマージャーニーをたどらせ、各ステップでどのように顧客に対してアプローチするか、各アプローチごとの目標値をどう設定するか、などを細かく設計していきます。
各ステップでの顧客とのコミュニケーションクオリティを高め、エンゲージメントを強化するような設計をするために、見込み顧客のペルソナを設定することもとても重要です。
現状の見込み顧客のデータからペルソナを設定し、そのペルソナに対してどんな情報を提供すべきかを検討します(1 to 1マーケティング)。
スコアリングの設計と営業との連携
マーケティングオートメーションツールのスコアリング機能を使って、見込み顧客の選別とその妥当性を吟味しましょう。
スコアリングは、見込み顧客へのアプローチやコミュニケーションを検討するのに有益な機能です。
見込み顧客を対象に見込み度合いを点数化することを、リードスコアリングと呼びます。
リードスコアリングでは、見込み客の属性や過去に実施したアンケートへの回答内容、サービスや製品に対するアクション履歴などのデータを用いて見込み顧客の行動を指数化します。
一般的に、この指数が高い顧客をHotリード、低い顧客をCoolリードと呼び、指数の高いHotリードほど商談に至る確率が高く、指数が低いCoolリードは検討プロセスの初期段階にいるとみなされます。
(なお、この指数を向上させるアプローチをナーチャリングといいます)
リードスコアリングによってアプローチすべきHotリード(購入意欲の高い見込み顧客)を抽出できたら、営業部門と連携して営業をかけていきます。
見込み客に対してやみくもに営業をかけるよりもはるかに効率的な営業ができ、多くの受注につながることにもつながります。
「マーケティング部門がリードスコアリングによって受注率の高い(もしくは低い)Hotリード(もしくはCoolリード)を抽出→そのデータに基づき、営業部門がアプローチをかける」という連携体制を構築することで、部署間での重複作業もなくなり、企業としての抜本的な効率化を図ることが可能になります。
この際、部署間でデータをどのように受けわたすか等、スコアとデータの扱い方も、運用前にきちんと設計しておきましょう。
運用開始後は目標値をもとにPDCAをまわす
すべての設計が一通り終わったら、設定した目標値をもとにPDCAを回し、オペレーションフローを最適化していきましょう。
最初の設計は、いざ実行に移すと何かしらの改善点が見えてくることがほとんどだと思います。
特に、部署間の連携はほころびが起きやすいので注意が必要です。
その改善点を見逃さずに着実に改善を重ねていくために、初めは短期スパンかつ定期的に、関係者による報告会を行うことが望ましいでしょう。
丁寧なPDCAを回すことで、部署間の連携も強まり、マーケティングオートメーションの効果も強固になっていきます。
マーケティングオートメーション活用における注意点
マーケティングオートメーションを効果的に活用するためには、目標の明確かや適切な数値目標の設定、多分野に渡る導入設計を段階的に行う必要があり、「導入すれば何かしらの効果が期待できる」類のツールではありません。
これまでご説明してきたこれらの項目はマーケティングオートメーション導入にあたっての必須条件ですが、さらにツールを活用するために、以下の2点にも注意しましょう。
マーケティングと営業の連携、認識の共通化
「HotリードやCoolリードを指数化する際に、どんな顧客行動をスコアリングの指標とするか」や、「マーケティングオートメーションツールで抽出したHotリードをどうしたら営業に効率よくパスできるか」など、マーケティングオートメーションを活用するための設計で必要なプロセスには営業の知見を活かすべき場面が多数発生します。
そのため、「マーケティングオートメーションの導入はマーケティング部門の担当」と認識されがちかもしれませんが、部署間で足並みを揃えないとうまくいきません。
マーケティングオートメーションを導入することが決まったら、その点を営業部門にしっかりと伝えて当事者意識を共有するようにしましょう。
導入初期の段階から、関連する部署同士がしっかりと連携し、定期的な認識のすり合わせを行うことが大切です。
導入には技術的な業務もある
またマーケティングオートメーション導入の際は、対象ページへのタグ設置やDNS・SSLの設定作業など、やや専門的な技術を必要とする業務も必要となります。
SSLサーバ証明書はツール側のサーバに設置する必要があり、webサーバを外部委託している場合は急な設置ができない可能性があります。
導入が決まったら、その旨を早めに委託先に伝えた方が良いでしょう。
まとめ
マーケティングオートメーションを導入する際に抑えるべきポイントや設計のステップ、注意すべきポイントについてお伝えしました。
この記事を読んで、「なんだか大変そう」「自分たちにうまく導入できるだろうか」と不安を感じてしまった方もいらっしゃるかもしれません。
たしかにマーケティングオートメーションの導入は一朝一夕にはいかないものです。
現状の把握と整理や部署間の密なコミュニケーション、ツールの初期設定、運用開始後のPDCAサイクルや定期的な情報交換など、導入前後にやらなければならないことがたくさんありますし、それらの入念な準備を怠ればマーケティングオートメーションの十分な恩恵を受けることができなくなってしまいます。
ですが、そのプロセスをきっちりとやりとげて導入を完遂させ、良いPDCAを回し続けることができれば、見込み客をきちんと売り上げにつなげ、部署や自社の業績アップに大きく貢献できる可能性を秘めています。
マーケティングオートメーションを有効活用して、効率的に事業を拡大していきましょう。