日々社会は目まぐるしく変化しています。
ダイバーシティが浸透したことで、人々の働き方は多様化し、それに伴い会社の在り方も広がりを見せています。
オフィスにデスクを構えるのではなく、いつでもどこでも働けるようなリモートワークスタイルも増えてきました。
昔からこうだから、という考えは推奨されず、日々新しいソリューションが生まれ続け、それに乗り遅れた企業はどんどん衰退していきます。
こういった中、社会の背景を敏感に察知し、世の中のニーズに合わせたスタイルとして今注目されているのが「インサイドセールス」です。
これは「営業」という仕事の在り方を大きく変えるものですが、これにより多くの企業が売上の向上やコストの削減に成功し、業績を伸ばしています。
新しい時代の働き方のひとつとなるインサイドセールスについて、導入事例を交えてご紹介していきましょう。
インサイドセールスとは
簡単に言うと内勤型の営業で、アメリカで生まれた営業スタイルです。
国土が広く、移動するだけで大半の時間を取られてしまうアメリカでは、顧客の会社を頻繁に訪問することはできません。
そこでコミュニケーションの主流となっていたのが電話やメール、web会議などで、このように顧客の会社へ出向かず、自社にいながら営業の仕事を行うことをインサイドセールスと呼んでいました。
そしてこのアメリカの事例をもとに、日本の企業でも取り入れられ始めています。
日本では営業活動のすべてをインサイドセールスで行うというよりも、従来のように会社を訪問して行う営業と組み合わせて使われる事例が主流となっています。
インサイドセールスにおける成功とは?
導入したものの、結果業績をあげられずに終わった事例もあるため、やみくもに取り入れるのは得策とは言えません。
ではインサイドセールスを成功させるためには何が必要なのか、成功すると企業にはどのようなメリットがあるのかを具体的な事例とともにご紹介します。
どのような目標をもって取り組むかが重要
インサイドセールスだけに限ることではありませんが、何かを導入するにはそれによってどうなりたいのか、という課題設定が具体的であることが重要です。
事例をあげてご説明しましょう。
【目標の例】
・経費削減のためできるだけ移動時間を短縮したい
・業務を細分化して営業職の負荷を減らしたい
・営業という仕事をデータで管理したい
・無駄な工数を減らしたい
このように活用の仕方次第でインサイドセールスがもたらす効果は変わっていきます。
目的を明確にすることでもたらされる効果はより大きくなるため、まずは何のために導入するのかを考えましょう。
しっかりと目標をもって取り組んだ企業には、どのような効果があったのでしょうか?
事例を交えて以下より大きく3つご紹介します。
ページの後半ではいくつか導入事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
会社全体の営業活動の効率化につながる
企業によって営業スタイルは異なるかもしれませんが、多くの場合商談を行う営業マンが契約書の処理や問い合わせ対応、事前のアポイント取りなども行っていると思います。
また上記に合わせて、いわゆるテレアポや飛び込み営業など新規顧客の獲得も同じ営業部署が担っている事例が多いでしょう。
つまり、新規顧客の開拓・案件化・商談・受注・アフターフォローというすべての業務をひとつの営業部署が行っており、場合によってはひとりの営業マンがすべてこなす、という事例もあります。
業務が多岐に渡るということは営業マンがそれぞれの工程に注力できる時間が減るということになります。
インサイドセールスでは営業工程を細分化し、適材適所に振り分けるということが可能です。
それぞれの工程における事例でご説明しましょう。
【新規顧客開拓の事例】
・混在したリストの中から確度の高いものを抽出する
・確度の低い顧客には定期的に情報を提供し見込み客へと育成する
・顧客の温度が高まった状態で商談担当の営業へつなぐ
・顧客の課題感や興味のある情報をヒアリングし商談前に営業へインプットする
【商談の事例】
・web会議等の活用で移動時間の削減につながる
・アポイント獲得から商談まで短時間で設定できる
【アフターフォローの事例】
・受注後も定期的に顧客に情報を提供する
・追加受注の見込みが立ったら商談担当の営業へつなぐ
このように、工程ごとに専任のチームを作ることで、工程内の無駄を徹底的に排除していきます。
そして営業が「商談」「受注」という部分に専念できることで、成約確度も高まっていくのです。
また、商談そのものをインサイドセールスにすることで、移動時間の削減や時間確保の難易度を下げることができるようになります。
リードタイムの短縮につながる
見込み客にアプローチした後も、すぐに商談とはならない事例もあります。
「興味はあるけれどもちょっと考えたい」「上長に判断を仰ぐ必要があるためすぐに返事ができない」など、リードタイムが長くなる事例は多いでしょう。
すぐに案件化しなかったため後回しにしてしまい、結局見込み客を手放してしまった、ということもあります。
このような状況にも、インサイドセールスは効果的です。
インサイドセールスの場合、商談する営業とは別のチームがリードに対してアプローチを行います。
データで管理された見込み客に対して専門のチームが対応することになるため、可能性のあるリードを見逃さず、見込み客に対して定期的にアプローチを行うことができるため、検討中のまま放置したり、手放したりする可能性も低くなります。
またその都度課題をヒアリングし、適切な情報を提供しつづけるため顧客の興味が高まりやすいのです。
結果的にリードタイムが短縮され、案件化される可能性も高まっていきます。
営業ノウハウの共有がすすむ
営業の仕事は属人的だと言われます。
社外で活動することが多い営業マンにとって、営業スキルを見て盗むということは難しく、スキルを言語化して共有するということは難易度が高いことでもありました。
しかし人材を育成するためには、売上の高い営業マンのノウハウ共有が必要不可欠です。
インサイドセールスでは、web会議システムを使い商談を自社内で行えるため、雰囲気づくりやコミュニケーションのとり方、プレゼンテーションの流れなどを実際に横で見ながら学ぶことができます。
新人育成の際には横で先輩にアドバイスをもらいながら商談が進められるため、フィードバックスピードが早く成長も早まるようです。
インサイドセールス導入事例まとめ
どのようなシーンにおいてインサイドセールスが取り入れられているのでしょうか?
具体的な事例をご紹介しましょう。
導入事例①NTT東日本
こちらはNTT東日本の中でも宮城支店での導入事例です。
同社では営業における「移動距離の長さ」と「社員の減少」が大きな課題となっており、ひとつの商談にかける時間が長くなることで、コンスタントにアプローチができなくなっていることを問題視していました。
そこで訪問しなくても商談が行えるインサイドセールスの導入に踏み切ったのです。
最初からすべてをインサイドセールスへ移行することに不安もあったため、まずはテストとして対象を10社に絞り実施。
結果的に顧客からも担当営業からも特に問題はないという反応だったため、その後本格的に導入が進められました。
NTT東日本ではすべてをインサイドセールスへ切り替えることはもともと考えてはいなかったようです。
インサイドセールスは、あくまでもフィールドセールスを活かすためのもの。
インサイドセールスを活用することで生まれた時間を使い、より多く顧客の元を訪問し関係を深めていきたい、という狙いでした。
NTT東日本の試算によると、35名のメンバーが週に1回ずつweb会議システムを使って商談をインサイドセールスにすることで、年間6600時間の移動時間が削減できると出ています。
導入事例②株式会社Jストリーム
株式会社Jストリームは企業の動画活用を支援する会社ですが、こちらの導入事例をご紹介します。
Jストリームでは、マーケティング部がイベントやセミナーなどで名刺を集め、その名刺やwebからの資料請求リストを一式営業へ渡すというフローになっていました。
そして営業はもらった名刺やリストに連絡をしていくのですが、まったく中身が精査されていない情報のため、時間をかけてアタックするものの商談までつながる可能性がとても低く、営業にとっては旨味の少ないものとなっていました。
結果的に名刺やリストは埋もれていき、商談につながる可能性を逃すことになります。
その後テレマーケティング会社に外注するものの、テレマーケティング会社は件数目標をこなすことが目的となり、取れたアポイントも成約確度が低く、効果的ではありませんでした。
そして新しく導入したのがインサイドセールスです。
インサイドセールスとテレマーケティング会社との違いは、中長期的なスパンでコミュニケーションを取れることにあります。
企業の情報をしっかりインプットした担当が対応するため「取り敢えず行きます」のような乱暴なアポ取りは行いません。
顧客から情報を吸い上げ、課題感を探り、必要な情報を定期的に提供、そして商談のタイミングが来たときに初めて営業へと接続されます。
営業には、これまで蓄積された情報と、商品に対して熱量の高まった状態の顧客が渡されるため、無駄なアポイントは減り成約確度が高まったようです。
インサイドセールスにより顧客との関係を築けたおかげで、商品単体だけではなく関連商材まで広範囲に受注を増やすことができ、中には1000万円を超える大きな案件を受注に結びつけることができた成功事例です。
導入事例③ソルクシーズ株式会社
企業向けのシステム開発や、クラウドサービスを提供するソルクシーズ株式会社の導入事例です。
顧客はサービスに興味はあるものの、魅力を理解してもらうには複数回説明をする必要のある商品のため、1案件を受注するまでに時間もかかり、移動時間の工数も増えていました。
この時間の無駄を省きたいと思ったことから、インサイドセールスの導入が検討されました。
まずアポイントの中の数回をweb会議にしたことで、移動時間は大幅に削減されました。
またインサイドセールスでは画面上でデモンストレーションの共有ができるため、「システム」という商品を説明する場合には最適なのです。
初回のアポイントからインサイドセールスにする場合もあり、その際も顧客の商品理解が深まることでリードタイムが大幅に短縮されました。
インサイドセールス導入前は約2ヶ月かかっていたリードタイムが、1ヶ月に半減したという成功事例となっています。
導入事例④株式会社Donuts
バックオフィス業務支援のクラウドサービスを提供する株式会社Donutsの事例です。
こちらはインサイドセールスを新人教育に活かしたという事例となります。
営業商談はweb会議システムを使い基本的にインサイドセールスに切り替えているという同社ですが、まずweb会議になることで、会議室の確保や訪問者へのお茶出し等がなくなったことからメリットを感じているようです。
株式会社Donutsでは、新人の訪問同行をweb会議への同席にすることで、新人の育成が効率化されました。
また企業訪問に同行する場合には2人分の交通費がかかっていましたが、この交通費の経費削減にもつながっています。
インサイドセールスを新人育成に活用したことで、同社では入社4ヶ月の新人が歴代の営業と同等の受注件数が獲得できています。
まとめ
インサイドセールスの事例とともに、成功するためには何が必要かという点をご紹介してきました。
一言でインサイドセールスといっても役割は多岐に渡ります。
導入を検討している場合には、まずは自社のどこに課題があるのかを一度振り返ってみましょう。
それによりどのような形でインサイドセールスを取り入れるかを考えることをおすすめします。
事例でも紹介したように、課題にしっかりミートできれば効果は期待できます。
それぞれの会社にあった導入の仕方をぜひ検討してみてください。